【イナズマイレブン】氷雪のエクリプス Ⅱ (ページ35)

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第84話ページ35

「やれ」

そう言ったデザームが黒いサッカーボールを掲げた。

校舎が目の前で崩れていった光景を思い出し、気持ち悪くなった如月は体を折り曲げて咽せ返る。それを落ち着かせようと隣にいた塔子が如月の背中を摩った。

彼女の咳き込む声を聞いて振り返った円堂は、心配そうにその様子を見ると、何かを決意したように顔を引き締めて再びデザームの方へ顔を向けた。

「待て!!!」

突然飛び込んできた大きな声に、イプシロンのメンバーは不意を突かれた表情で声の聞こえた方を見る。
「まだ、試合は終わっちゃいない!! 俺達が相手だ!!」怒りに両の拳を握った円堂がデザームを鋭く見つめていた。

「お前達が…?」デザームは雷門イレブンを品定めをするように見渡す。塔子に介抱されながら苦しそうに胸元を押さえる如月が目に入るが、それには気付かないふりをして「いいだろう」と怪しく笑った。

「でもキャプテン! 目金先輩が…」

「それに加澄も――」

漫遊寺中とイプシロンの試合の時から如月が心配だった塔子は、壁山の言葉に続けて言う。しかし突然腕を掴まれ、塔子は言葉の途中で如月に視線を向けた。
『…私は、大丈夫だから』震えた声で振り絞るように言う彼女は顔面蒼白で、その言葉にはまるで説得力がない。

「だったら、10人で戦うまでだ!!」

如月の異変は円堂も把握しており、彼は如月が試合に出られるような状態ではないことも分かっていた。壁山に勢いよく言い切った円堂の言葉に、栗松は「じゅｯ、10人で!!?」と声を上げる。

「このままあいつらの好きにはさせられないだろ!!」

「それはそうでやんすが…」

たしかに円堂の言う通りだが、だからと言って今の雷門イレブンが到底敵うような相手ではないことは明白だった。これまで円堂の力強さに引っ張られてきた彼らも、今回ばかりは正気の沙汰ではないとでも言いたげに円堂を見つめる。

このまま円堂の勢いに押されて10人でイプシロンと戦うことになるのか――その時、音無が「11人目ならいます!!」と声を上げた。
そんな人物に心当たりがある筈もなく、雷門イレブンの視線は彼女に集まる。音無は両手でボールを持って不安そうにイプシロンを見つめる木暮を手で指した。

「木暮君が!!」

まさか自分が指名されるとは思っていなかったようで、当の本人は「ええっ!?」と肩を跳ねさせる。第一印象が良くなかったこともあり、雷門イレブンは「木暮───!?」と声を揃えた。