【イナズマイレブン】氷雪のエクリプス Ⅱ (ページ33)

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第82話ページ33

「何度言われても答えは同じです。私達に戦う意思はありません」

はっきりと告げた影田の正面には、あのボールを抱えたデザームがいた。彼の後ろにはイプシロンの面々が並んでおり、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。その表情から、彼らが漫遊寺イレブンを下に見ていることは明らかだ。

―――加澄さん、大変!! エイリア学園が現れたの…!!

あの後、暫く外に出ていても睡魔が訪れることはなかったので、せめて体だけでも休ませようと如月はテントに戻っていた。眠れないまま瞼を閉じていたところ、数十分前に木野に肩を揺すられて今に至る。

どういう訳か、漫遊寺中のグラウンドにいた音無･木暮･古株がイプシロンの気配に気付いて急いで円堂と瞳子に声を掛けたそうだ。

「ならば仕方ない」

デザームは黒いサッカーボールを掲げた。何をしようというのか――如月が左手首を握り締めた時、高く飛んだゼルがボールを蹴り込んだ。
ボールは猛スピードで影田と阿太郎の間を突き抜けると、勢いよく校舎を貫く。衝撃に耐えかねて崩れていく校舎を見て、その光景と足元に伝わる振動に如月は5年前の事故を思い出した。

『ひｯ…!!!』

倒壊する音を拾ってしまう耳を強く塞ぎ、如月はその場に蹲る。助けて、兄さん――叫びたい気持ちを抑えて歯を食いしばるが、情けない悲鳴が小さく溢れた。

「如月さん…!!」

崩れる校舎を目の当たりにした瞳子は、まさかと思い慌てて如月の方に目を向ける。その様子を見てすぐに駆け寄ると彼女の背中を優しく摩った。
それを横目で見ていたマキュアは一瞬苦しそうに顔を歪める。視線を背けた先でモールと目が合うと、彼女は僅かにハッとして再び漫遊寺イレブンを見据えた。
デザームの挑発的な笑みに、怒りに駆られた影田は目を見開く。

「…やむを得ません。その勝負、お受けいたしましょう……!!」

＊

「大丈夫か…?」塔子に顔を覗き込まれ、如月は『うん…』と歪な笑みを見せた。塔子が気付いた時と比べれば大分落ち着いてきたように見えるが、左手首を強く握りしめた如月の体は未だに震えている。

彼女を心配する気持ちは他の雷門イレブンも同じだが、試合開始のホイッスルが鳴り響いたのでそちらに注意が向いた。塔子も如月への心配を拭いきれないままピッチに視線を向ける。

「…あたしもいるよ」

誰にも聞こえないくらい小さな声で呟くと、塔子はそっと如月の背中に手を添えた。