第74話 ページ25
ボールは赤い光の尾を引いてレーゼ達のもとへ一直線に突き進む。怯えて体を仰け反らせる彼らの中央で止まると、デザーム達が現れた時と同じ光を発し出した。
それを見たレーゼが何かを決意したように顔を引き締めると、隣にいた如月を軽く突き飛ばす。咄嗟のことに驚く彼女は、何が起こっているのか分からないまま戸惑いの視線をレーゼに向けた。
「…ばいばい、加澄」
『え……』
「元気でね」優しく微笑むその表情は、まさしく緑川のものだった。何故彼から今生の別れとも取れる言葉を聞かなければならないのか。何が何だか分からないまま強まる光に目を細めると、ジェミニストームは光と共に跡形もなく消えてしまった。
あり得ない光景を目の前にして雷門イレブンは言葉を失う。如月は状況が飲み込めず、その場に立ち尽くした。リュウジ達が消えた――信じられない事実だけがここにある。自身の鼓動が耳の奥で煩く反響し、足下がぐらりと大きく揺れた。
「我らは、エイリア学園ファーストランクチーム･イプシロン」
先程と同じ光を感じ、円堂はハッとしてデザーム達のいる方を振り返る。彼らは自らのチームをイプシロンと名乗った。
「地球の民達は、やがてエイリア学園の真の力を知るだろう」
「…!!」
その言葉を残してイプシロンは姿を消した。エイリア学園を倒した喜びに浸ろうとする矢先に新たに現れたチームに、雷門イレブンは驚きのあまり言葉を失う。
『………あ、ああ……ｯ』
「…!! 、如月さんｯ!?」
ジェミニストームの消失とイプシロンの出現に気を取られていた瞳子が、訪れた静寂によって如月の声に気付いた。地に座り込んで震える彼女のもとへ急いで駆け寄る瞳子に円堂も続く。
『私の…せ、で……』
「如月さん、落ち着いて。彼らが消えたのはあなたの所為じゃないわ」
途切れ途切れに紡がれたか細い声を拾い、瞳子は優しく如月の背中を撫でた。円堂が初めて見る瞳子の優しい声と動作に驚いていると、彼の後に続いて駆けて来た木野が、如月の背中にそっと彼女のジャージをかける。それに気付いた瞳子は「ありがとう」と木野に言った。
「加澄、大丈夫か…?」
円堂と木野も心配そうに見つめるなか、瞳子の手が如月を安心させたのか震えていた彼女の瞳は次第に落ち着きを取り戻していく。我に返った如月は掠れた声で『ね、さん…』と呼んだ。
とても小さい声だったからか、円堂達はそれに気付かない。
「大丈夫よ」と瞳子は苦しそうに微笑んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 95人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：一森 | 作成日時：2024年1月11日 1時
