【イナズマイレブン】氷雪のエクリプス Ⅱ (ページ24)

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第73話ページ24

「ありがとう、加澄」

レーゼはゆっくりと微笑んだ。彼の返答に、如月の顔色は『それじゃあ…!』とぱあっと明るくなっていく。その様子を目の前にしたレーゼは「…でも、ごめん」と苦しそうに顔を歪ませた。

「俺達は、加澄と一緒に戦えない」

はっきり言い切ってから、罪悪感に苛まれて眉間の皺がいっそう深くなる。

たしかにリュウジの言う通り、突然こちら側について一緒に戦ってほしいと言われてもすんなり受け入れるのは難しいかもしれない。なんで、と言いたい気持ちをぐっと押し隠し、如月は『…そっか』と悲しそうに微笑んだ。

『ごめん、困らせちゃったよね』

「ううん、そんなこと――」

「無様だぞ、レーゼ」

如月を謝らせてしまい、レーゼは咄嗟に頭を振る。突然、彼の言葉を男の低い声が遮った。黒い靄が地を這うように辺りに広がり始める。
聞き覚えのある声に、如月とジェミニストームのメンバーはハッとして目を見開いた。

「なんだ…!?」

自分達の足下まで広がってきた靄を、雷門イレブンは戸惑いながら見つめる。離れたところから紫色の光が発されているのを感じ、彼らは光源の方へ視線を向けた。

そこには逆光を受けた人達のシルエットが黒く現れていた。光は徐々に収まっていき、その正体が露わになる。そこには、ジェミニストームにも似た特徴的なユニフォームを身に纏った11人の男女が立っていた。中央に立つ黒髪の男の手元には、赤い光をちりちりと走らせた黒いサッカーボールがある。

「デザーム様…!!」

怯えた様子のレーゼが溢した呼び名を耳にして、如月の瞳が悲しみに揺れた。エイリア学園にいた頃から嫌悪していたこの呼び方に再び不快感を覚え、左手首をきゅっと握る。

「覚悟はできているな?」そう言ってデザームは脇に抱えていた黒いサッカーボールを持ち上げた。彼の言っていることの意味は分からないが、ジェミニストームのメンバーの怯えようを見る限り只事ではないことは想像に難くなかった。
如月は緊張感と共に身を構えて『覚悟…?』と眉を顰める。

「――お前達を追放する」

口角を上げてジェミニストームを見据える彼らとは対照的に、レーゼは「デザーム様…」と絶望に満ちた表情だ。『追放…?』一体どういうことか、そんなルールは聞いていない――レーゼ達の様子も相俟って、“追放”の不穏な響きに如月の体が震えていく。

『ｯ……!?』

次の瞬間、デザームは持っていたボールをジェミニストームに向かって蹴り込んだ。