第70話 ページ21
試合が再開する。
唇を舐めると左側にいる選手にパスを出すというパンドラの癖を見抜いた一之瀬は、またしてもパスカットに成功した。
「さあ、俺にシュートを打たせろ!」
一之瀬は、染岡と並走して上がっていく吹雪の要求に応える。ボールを受け取り駆け上がる吹雪の背中を、レーゼは「奴を止めろ!」と指差した。
「来たな…!」レーゼの指示に従ってガニメデとカロンが吹雪の前に立ちはだかる。こうなることが分かっていたのか、吹雪は口角を上げると何の躊躇いもせずに「染岡!!」とパスを出した。
染岡は一瞬驚いた表情を見せるが、へへ、と笑って受け取ったボールを高く蹴り上げる。地面を突き破るように現れた青い龍がそれに追いつくと、ボールの周りを囲むように身を翻した。青い輝きを放つボールが染岡の足下へ降りていく。
「いけーｯ!!」
蹴り込んだボールは、龍と共にゴールへ向かった。
「なにｯ!?」逆をつかれて咄嗟に動けなかったゴルレオはボールに手を伸ばすが届かずにゴールを許してしまう。
得点を知らせるホイッスルに、雷門イレブンは歓喜の声を上げながら染岡のもとへ駆け寄った。ゴールにいた円堂が真っ先に染岡に飛び付いている様子が微笑ましくて、ジェミニストームが来てから気を張っていた如月の顔が柔らかく解ける。
「あの技は、ドラゴンクラッシュの進化版…。ワイバーンクラッシュと呼ぶべきでしょう!」
レンズを光らせる眼鏡に、如月は『いい名前だね』と頷いた。普段は必殺技に命名しても誰からの反応もないからか、目金は得意気に「そうでしょう!」と言って眼鏡をクイッと持ち上げる。
「へっ、まだ勝った訳じゃねえだろ」雷門イレブンが喜ぶ様子を一歩引いたところで見ていた吹雪が口を開く。目金が吹雪を振り返った。
「最後は俺が決めてやる」
それを聞いた染岡は吹雪に視線を向ける。彼がいつものように吹雪を睨んでいなかったことに気付いた如月は、それに意識が向いてレーゼが何かに怯えるように拳を握っていたことなど知る由もなかった。
＊
「我々がただの人間相手に失点…? ……こんな、ことが…」
「我々エイリア学園が、ただの人間に敗れることなど有り得ない…!! あってはならないのだ!!」焦燥に駆られて口をついた言葉と共に、レーゼは猛スピードで駆け出した。
ドリブルで上がる風丸からボールを奪取すると、レーゼに呼ばれてディアムが彼のもとへ向かう。
「ディフェンス、来るぞ!!」
「「おう!!」」
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作者名：一森 | 作成日時：2024年1月11日 1時
