【イナズマイレブン】氷雪のエクリプス Ⅱ (ページ13)

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第62話ページ13

「お前、今のシュート! 脚に物凄いパワーが集まってたぞ!! あれも特訓の成果だよな!?」

「ああ、手応えあったぜ。これで豪炎寺の分もやれる…!」

円堂の言う通り、最後の染岡のシュートには必殺技のような威力がこもっていた。彼自身もそれには覚えがあったようで、ジェミニストーム戦を前に自信が付いたのか噛み締めるように拳を握る。

「今日は僕の負けだね」

囲まれる染岡を見て、吹雪はそう呟いた。先程のリスが無事だったことを確認し、彼は安心して微笑む。
如月はそんな吹雪の視線の先を辿って、勝負の結果に合点がいった。彼のもとへ行くと『お疲れ様』と手を差し伸べる。吹雪はその手を取って立ち上がった。

「ありがとう」

今はいつもの吹雪君だ。やはり考えすぎだろうか。
如月は吹雪の目を見つめる。不思議に思った吹雪に「加澄さん?」と呼ばれ、彼女はハッとして『ああごめん、ちょっと考え事してた』と手を離した。

＊

その日の夜、瞳子はイナズマキャラバンの中で電話をしていた。相手は雷門理事長で、如月は瞳子の横で電話に耳を傾ける。

―――姉さん、ちょっといい? 吹雪君のことなんだけど。

数十分前、夕飯を済ませた如月は瞳子のいるキャラバンを尋ねた。吹雪のことが気になっていた彼女は、瞳子なら何か知っているのではないかと思ったのだ。

しかし瞳子も何も聞いていなかったようで、如月に『何か知ってる?』と訊かれても首を横に振るだけだった。

「私も、彼のことについて気になっていたの」洞察力のある姉さんが言うのだから、考えすぎではなかったのだろう。如月は安堵したような気持ちになり、瞳子と吹雪のことについて話していた。
試合の途中で雰囲気が変わること、雪が落ちる音にやけに怯えること――引っ掛かっていたことは2人とも同じだった、そう思った時に電話がかかってきたのだ。

「理事長、吹雪君ですが…。FWとDFのとき、まるで別人のように変わるんですが、あれは…?」

「ああ、そのことなんだが…」

傾ける耳に入ってきた話に、如月の頭は殴られたような大きな衝撃を受けた。幼い頃、雪崩、家族を亡くした――話の端々が耳の奥で反響する。
「ありがとうございます。では」如月が呆然としている間に電話は終わり、瞳子は心配そうに「加澄…?」と如月を覗き込む。

『ごめん、ちょっと驚いちゃって…。そろそろ戻るね』

おやすみ、と弱々しく微笑んで校舎へ向かう如月を、瞳子は暗い表情で見つめた。