第60話 ページ11
今日も雷門イレブンはスノーボードの特訓に励んでいた。
初日は滑ることすらままならなかった円堂も雪玉を避けられるまでに成長しており、後ろから追い付いた塔子が「円堂やるじゃん!」と声を掛ける。彼は「コツが分かってきたんだ!」と嬉しそうに言った。
風丸もふらつくことなく安定した滑りで雪玉を難なく躱してみせる。
その様子に木野は「すごい!」と両手を握った。
「皆避けるのが上手くなってきましたね!」
「それだけスピードに慣れてきた――速い動きの中で、周りが見えてきたということなんだわ」
初めは滑るのが精一杯だったメンバーも、楽しそうに滑りながら雪玉を躱している。雷門イレブンの成長速度は目を見張るものがあり、これには吹雪も感心しているようだ。「すごいすごい! 皆速くなってきたね! もっともっと速くなれるよ!」彼は嬉しそうに一同の後方を滑る。
最初はスノーボードの特訓に参加しなかった染岡も、朝の自主練習の成果もあってか他のメンバーと同じくらい滑れるようになっていた。滑りながら見つめる先に現れた雪玉を躱すと「見えたぜ!!」と笑う。後方から聞こえた染岡の嬉しそうな声に、如月もつられて笑みがこぼれた。
そしてこの特訓の成果は、サッカーでも発揮されていた。
一之瀬と競り合う風丸が彼を抜くと、そのままゴールへ上がっていく。その背中が遠ざかっていく速さに、風丸の武器であるスピードに磨きが掛かったことを感じて一之瀬は彼の成長を喜んだ。
「スピードを物にしたね!」
「ああ、思うように動ける!!」
＊
毎日の特訓や食事での努力を重ね、雷門イレブンは着実にパワーアップしていた。
日に日にスノーボードで雪の上を駆け抜ける彼らが速くなっており、夏未は「皆、少しは様になってきたと思わない?」と吹雪を覗き込む。彼は「うん、想像以上だよ!」と滑走路の雷門イレブンを見つめた。
「…私も、彼らを率いてまだ日が浅いけれど」瞳子が突然口を開く。マネージャー達は「え?」と視線を向けた。
「彼らは打てば響く選手達よ。それも、こっちの想像を遥かに超える勢いでね」
「「…!」」
滅多に雷門イレブンを称賛することがない瞳子の発言に、3人は目をぱちくりさせる。
そんなことは露知らず、特訓をしていた染岡がこちらへやって来て吹雪に勝負を持ち掛けた。彼の言葉に吹雪は「勝負?」と首を傾げる。
「ああ。俺の特訓の成果を、お前相手に試そうと思ってな」
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作者名：一森 | 作成日時：2024年1月11日 1時
