第51話 ページ2
「マジン･ザ･ハンド!!」
体を捻った円堂から繰り出された技は、シュートに軽く触れたのみだった。いつもなら右手に感じるシュートの重みがなく、それに気を取られた円堂の背後から魔神が消える。
ボールはクロスバーのやや上に逸れたが、如月の瞳はその先にいる女子生徒の姿を捉えた。
『ｯ危ない…!』
間に合え、その一心で駆け出す。ゴール手前で飛び越えるように高くジャンプすると、伸ばした右脚が間に合ってボールは着地した如月の足下に収まっていた。
『怪我はない?』
「は、はい…」
女子生徒の無事が分かると、よかった、と胸を撫で下ろして如月はピッチへ戻って行く。円堂がシュートを受けて倒れる塔子と壁山の体を起こしているのが見えた。
「しかしすごいな。ディフェンス2人がかりでも、コースを外させるのが精一杯…」
塔子は頭を押さえながら話す。たしかに、2人の技を受けても威力が落ちたようには見えなかった。かなり強力なシュートであることは間違いない。
「円堂。どんな強力なシュートも、この方法なら…!」
「うん、エイリア学園を倒せるかも!」
塔子の言葉に何か閃いたのか、円堂がハッとした時、鬼道が円堂を呼んだ。どうやら2人は同じことを考えていたようで、顔を見合わせて笑顔で頷く。そこへ瞳子が手を叩いてやって来た。
「はい、そこまで!」
そういえば試合は終わりだと言われていたな――思い出しながら、如月は円堂達のいるところまで戻って来る。
「すごいぜ吹雪!! あんなビリビリ来るシュート! 俺、感動した!!」
「僕もだよ。僕のシュートに触れることができたのは、君が初めてさ」
如月は、興奮冷めやらぬ円堂とにこやかに話をする吹雪の瞳の色を確認した。灰色がかった緑色のような、彩度の低い色だ。目尻も垂れて、柔らかい雰囲気を纏っている。
考えすぎただけだろうか。思考するのを放棄して、彼女は雷門イレブンと共に楽しそうな2人を穏やかに見つめた。
「吹雪! 俺、お前と一緒にサッカーやりたい!」
「僕もさ! 君となら…君達となら、思いっきりサッカーをやれそうな気がするよ!」
円堂の言葉が嬉しかったのか、吹雪は雷門イレブンを見渡して笑顔を見せた。
「吹雪君。正式に、イナズマキャラバンへの参加を要請するわ。一緒に戦ってくれるわね」
「いいですよ」
瞳子の勧誘を二つ返事で受け、吹雪の雷門イレブン加入が決まる。強力な仲間が加わることとなり歓迎ムードの中、染岡は納得のいかない顔をしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 95人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：一森 | 作成日時：2024年1月11日 1時
