第43話 ページ44
「「うわあ!!」」
『ｯ!!!』
直後、車体は大きく揺れ始めた。激しい横揺れに雷門イレブンは思わず声を上げる。
揺れは一瞬にして如月を暗闇へ深く引き摺り込んだ。誰もいない真っ暗な世界で、あの時の感覚に包まれる。如月は恐怖から身を守るように自身の体を抱えて蹲った。
『や、やだ……!! 兄さんｯ…!!』
揺れは数秒で収まり、一同は恐る恐る窓の方を見る。外は吹雪いており視界が悪く、何も視認できない。驚いたな…、と声を掛けようと隣を見た風丸が、如月の様子に気付いて咄嗟に「おい、加澄?」と顔を覗き込む。見開かれた目は何を見ているのか分からず、ただ瞳を震わせて悲鳴に近い声を漏らしていた。
「どうしたんだ、加澄!?」
円堂もそれに気付き、如月に声を掛ける。何度目かで「加澄!!」と円堂に肩を掴まれ、ようやく気付いたようで如月はハッと我に返った。自分がどこにいるのかを確認するように視線だけ動かして辺りを見ると、体を抱える手から力が抜けていく。震える瞳は肩を掴む円堂と隣の風丸を順に捉え、如月はか細い声で『…円堂君、風丸君……』と2人を呼んだ。
「大丈夫か…?」
如月の怯える様子があまりにも普段の彼女とかけ離れていたため、円堂は驚きを隠せないまま声を掛ける。体の震えは徐々に落ち着きを取り戻していき、如月は『ごめん、ちょっとびっくりしちゃって…でももう大丈夫』と弱々しい笑顔を見せた。
「――もう出発しても大丈夫ですよ」
キャラバンのドアが開閉する音と共に、乗降口に立った少年が微笑む。雷門イレブンが車体の揺れに驚いているうちに忽然と姿を消してしまったが、その間少年は何をしていたのだろうか。彼の口ぶりからして大方予想はついていたが、その柔らかな雰囲気からは信じられる筈もなく、雷門イレブンは「まさか…」「だよね…」と口々に溢した。
「おお、動く。よし行くぞ!」
エンジンをかけ、タイヤが雪溜まりから脱したことが分かり、古株はキャラバンを発進させる。その後ろには、大きな熊が気絶して倒れていた。
＊
「本当にここでいいのか?」
「うん、すぐそこだから」
キャラバンから降りた少年は、自身の後ろを指差した。そこにあるのは高く積もった雪のみで、遠くには林と山があるだけだ。
少年は脇にボールを抱え、円堂に「ありがとね」と微笑んだ。走り去るキャラバンを見送ると、先程指差した方へ向き直る。
「ふｯ!!」
蹴り込んだボールで道を作り、少年はそこを歩き始めた。
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一森(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます! そのように言っていただけて嬉しいです…! 更新頑張ります(^^) (12月25日 2時) (
レス) id: a9a946d0de (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからも一森さんご自身のペースで頑張って下さい(◍•ᴗ•◍) (12月24日 17時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一森 | 作成日時：2023年9月16日 3時
