第42話 ページ43
視線の先には空高く日の光を受けるサッカーボールが見えているのだろう、少年はキャラバンの天井の方を見上げた。
この言葉に、サッカー好きの円堂が反応する。彼は「いいなあ、その言い方! 蹴り上げられたボールみたいに真っ直ぐに、か…」と、少年の言葉を反芻した。
「なあ、サッカーやるの?」
「うん、好きなんだ」
「俺もサッカー大好きだよ!」
円堂が顔を近付けて問うと、少年は微笑んで頷く。その答えが嬉しかったのだろう、円堂が楽しそうに笑うので、少年もつられるように笑顔を見せた。少年は「そういえば」と言って体の向きを反対側に変え、如月を見る。
「君ってもしかして、如月加澄さん?」
「“氷月の女神”の…」久し振りにそう呼ばれた如月は、内心思い出しながら『うん、そうだけど』と頷いた。少年の「わあ、やっぱり!」という反応とほぼ同時に、彼の隣から「えっ、やっぱそうだったのか!?」と声が上がり、如月はきょとんとしてしまう。
「ごめん、びっくりしてつい…」雷門イレブンだけでなく少年の視線まで集めてしまい、塔子は恥ずかしそうに頭を掻いた。彼女は「小さい頃、パパが買ってくれた雑誌で見たことがあってさ」と話す。如月加澄ってどこかで聞いたことあると思ってたんだけど、思い出したよ! 塔子はニッと笑った。
彼女が話し終えたのを見て、少年が如月に向き直る。
「僕も君のこと、雑誌で知ってね。君のプレーする映像をよく観てたから、本人に会えるなんて嬉しいよ」
『そうなんだ、ありがとう。なんだか恥ずかしいな』
如月は少し照れくさそうに微笑んだ。それを見て少年も笑みを溢す。
キャラバンは和やかな雰囲気で満たされ、このまま白恋中へ向かっていく――そう思われたが、突如ガタンと大きな音を立てて走りを止めた。
「雪溜まりにタイヤをとられた…。ちょっと見てくるわ」
何度かアクセルを踏んでも車体が動かないので、シートベルトを外して古株が座席を降りた。しかし、外に出ようとした古株を「駄目だよ」と少年の一言が制止する。
「山親父が来るよ」
「山親父?」
山親父とは何のことか、さっぱり分からない雷門イレブンは彼の言葉に首を傾げた。暫くの静寂の後、何かを感じたのか目金が窓の外に目を向ける。眼鏡を動かして「んん…?」と白い景色に目を凝らした彼は、何者かが窓を叩いたことに驚いて悲鳴を上げるとへなへなと座席に倒れ込んだ。
雷門イレブンの視線は音のした方へ集まる。
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一森(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます! そのように言っていただけて嬉しいです…! 更新頑張ります(^^) (12月25日 2時) (
レス) id: a9a946d0de (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからも一森さんご自身のペースで頑張って下さい(◍•ᴗ•◍) (12月24日 17時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一森 | 作成日時：2023年9月16日 3時
