第40話 ページ41
「チームはどうだ? もう慣れたか?」
『うん、少しずつ慣れてきたかな。皆優しくていい人達だね』
円堂は寝転がったまま如月に顔を向けた。訊かれた彼女は思ったままに答える。少し間を空けて『…皆仲良しで、羨ましいくらい』と困ったように笑った。
「なんだよ、加澄も俺達の仲間なんだからそんなに遠慮すんなって!」
「な、土門!」「ああ」円堂に言われて土門も頷く。気を遣わせてしまっただろうかと申し訳なく思い、如月は『でも皆は最初からずっと一緒にいた訳だし、最近入った私が羨むのも話が違うっていうか』と慌てて付け加えた。
「実は俺、転校して雷門に来たんだぜ」
『えっ、そうなの?』
「ああ」
いつも明るく、周囲に人が絶えないイメージを土門に対して持っていた如月は、思わぬカミングアウトに身を乗り出す。
「しかも、帝国のスパイとしてさ」土門が笑って何でもないように言った。“帝国”という言葉に如月の右手がぴくりと動くが、彼女の意識は土門がスパイだったことの方に向く。
『それって帝国学園を、その……裏切った、ってこと…?』
「ははっ、まあそうだな」
もっと婉曲的な訊き方があったのではないか、恐る恐るではあったが、如月は口から出た言葉を後悔した。しかし土門は気にも留めず、からりと笑って頷く。
「それに、豪炎寺も鬼道も転校生なんだぜ」
円堂は「知らなかっただろ?」と悪戯っぽく笑った。彼と特に親しげな2人も最初から一緒だった訳ではなかったのか、と驚いた如月は『そうだったんだ』と目を丸くした。
「鬼道なんて、最初は俺達こてんぱんにやられちゃったけどさ…。サッカーを好きな気持ちが一緒なら、敵も味方も関係ないだろ?」
当然のように言った円堂の瞳は、あの時と同じく透き通って綺麗だった。何故だか今の如月にはその瞳が怖くなく、それどころか心の靄が炭酸水で穿たれたような、救われた感覚を覚える。
『そう……そう、だよね』
そうか。サッカーを好きな気持ちが一緒なら、敵も味方も関係ない。ジェミニストームの皆もサッカーを愛する心は同じだと分かれば、もしかしたら、私達と共にエイリア学園と戦うことを円堂君は許してくれるかもしれない。皆のしたことは決して許されないが、事情を話せばもしかしたら――一縷の希望を見付け、如月は右手を握り締めた。
『私、そろそろ戻るね。おやすみ、円堂君、土門君』
今日はよく眠れそうだ。
如月は晴れやかな気持ちでテントに戻った。
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一森(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます! そのように言っていただけて嬉しいです…! 更新頑張ります(^^) (12月25日 2時) (
レス) id: a9a946d0de (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからも一森さんご自身のペースで頑張って下さい(◍•ᴗ•◍) (12月24日 17時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一森 | 作成日時：2023年9月16日 3時
