第39話 ページ40
時間が経ち、辺りはすっかり暗くなっていた。風呂から上がった雷門イレブンは、焚き火を囲んでいた。壁山と栗松が漫才をし、皆はお腹を抱えて笑っている。
「あ、加澄!」
そこへ風呂上がりの如月が戻って来た。円堂に呼ばれ、如月は『楽しそうだね』と微笑みながら合流する。隣の塔子に「もう風呂は済んだのか?」と訊かれ『うん。いい湯だったよ』と頷いた。
―――如月さん、ちょっといいかしら。
何時間か前、皆が浴場へ向かう中、瞳子は如月を呼び止めた。
如月は瞳子が自分に何か用があるものだと思いついて行ったが、結果から言うと何もなかった。如月の腕の傷を気遣い、雷門イレブンとの入浴が被らないようにするためだったのだ。
如月は途中まで気付かなかったが、1人しかいない脱衣所でリストバンドを外した時にハッとした。
―――お風呂上がったよ。ありがとう、姉さん。
浴場から出ると、出入口に立っていた瞳子に礼を言った。彼女は柔らかく微笑むと、如月の頭を優しく撫でてから浴場に入っていった。
「「どうも、ありがとうございましたー」」
漫才を終えた壁山と栗松がぺこりと頭を下げる。久し振りに見た気がする瞳子の笑顔を思い出していた如月は、雷門イレブンが2人に拍手を送っていることに気付くと少し遅れて控えめに手を叩いた。
その穏やかな横顔に、塔子も自然とあたたかい笑みを携えていた。
＊
―――ねえ塔子さん、ちょっと訊いていいかしら。
夏未の問い掛けから始まろうとした恋愛話は、彼女の杞憂だったという結末にあっさり落ち着き、女子はテントで寝息を立てていた。
しかし、エイリア学園の皆が気掛かりでなかなか眠りに就けないでいた如月は、気持ち良さそうに眠る4人を起こさないように気を付けながらこっそりとテントを出る。
ここなら誰もいないだろうか、そう思ってキャラバンの屋根に行くと、そこには寝巻きの上で仰向けになった円堂と土門の姿があった。
『あれ、2人とも』
「お、加澄じゃん!」
「加澄も眠れないのか?」
『うん、そんなところかな』
私も、ということは2人も眠れなくてここに来たのだろうか。気になった如月は『2人も?』と訊きながら土門の隣に腰を下ろす。円堂と土門は顔を見合わせてから「まあな」と苦笑いを浮かべた。
虫の鳴き声が聞こえる程の静寂の中、誰かのいびきが下から僅かに聞こえてくる。2人が眠れない理由はこれか、と勘付いた如月は2人と同じように苦笑いした。
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一森(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます! そのように言っていただけて嬉しいです…! 更新頑張ります(^^) (12月25日 2時) (
レス) id: a9a946d0de (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからも一森さんご自身のペースで頑張って下さい(◍•ᴗ•◍) (12月24日 17時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一森 | 作成日時：2023年9月16日 3時
