第34話 ページ35
「…はい、勿論です」
俯くレーゼの額を一筋の汗が伝う。
ガゼルを照らしていた青いスポットライトが消え、彼が部屋から去ったことが分かると、バーンを照らしていたスポットライトも追いかけるように消えた。
「話は終わりだ。下がっていいよ」
「はい」
グランの言葉の後、最後のスポットライトも消えて部屋は真っ暗になった。緊張で気を張りつめていたレーゼは、部屋から出て練習場へ向かう廊下で小さく息を吐く。
1人部屋に残ったグランは、頬杖をついてレーゼの言葉を反芻していた。
「加澄……」
＊
「…おい」
廊下で先を歩く背中にバーンが声を掛けた。呼び止められたガゼルは足を止めるとゆっくりと振り返る。何も言わず瞳だけこちらに向ける横顔が弱々しくて、どうしようもなくなったバーンは「あー…」と乱暴に頭を掻いた。
「…加澄、見付かってよかったな」
何を話そうという訳ではなかった。らしくないガゼルを見ていると調子が狂うから、いつもの彼に戻ってもらわないと困る――その一心で何も考えずに声を掛けた結果がこれだった。
見付かってよかったなって、そんな訳ないだろ。加澄の居場所が父さんにバレたら、それこそあいつの身に何が起こるか分かったもんじゃないってのに。
バーンは口から出た言葉を後悔した。彼の予想通り、ガゼルは「は…?」と低い声で睨む。
「貴様、正気か…? 加澄が雷門にいることがあのお方の耳に入れば、ただじゃ済まないんだぞ」
分かってるって、とバーンは視線を外した。
「でもガゼル、加澄がいなくなってたからずっと変じゃねえか。あいつが無事だって分かっただけでも、まだマシだろ…」
言い訳にしてはかなり苦しいという自覚はあった。だがこれはバーンの本心であり、このままガゼルに圧されるのも癪だったから――彼は勝手に尤もらしい理由を見付けて自身を納得させる。
シアンがいなくなって、ダイヤモンドダストはジェネシスの座から遠のいた。普段のバーンなら挑発のタネにしていたかもしれないが、事案が事案だけに洒落にならないのでそんなことはしなかった。
寧ろバーンも如月のことが心配であるし、この件を茶化すことがタブーであることは星二郎の発する空気から明白だ。
「…そうだね」
ガゼルは暫く黙っていたが、バーンの言葉を冷静に受け止めるだけの理性は持ち合わせていたのか、少しして落ち着いた声で同意を示すと再び練習場へと歩みを進めた。
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一森(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます! そのように言っていただけて嬉しいです…! 更新頑張ります(^^) (12月25日 2時) (
レス) id: a9a946d0de (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからも一森さんご自身のペースで頑張って下さい(◍•ᴗ•◍) (12月24日 17時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一森 | 作成日時：2023年9月16日 3時
