第32話 ページ33
「これで吹雪士郎のことが分かったって言えるの?」
「でも、これが限界なんです。画像も公式記録も何もなくて…」
隣にあった円堂の頭を強引に引っ込ませて言った夏未に、音無は困ったように笑った。彼女の言う通りパソコンの画面には沢山の文字が映っており、吹雪士郎本人と思しき画像はどこにも見当たらない。
ふと鬼道が口を開いた。
「なぜ、フットボールフロンティアには参加しなかったんだろうか…」
たしかに、と如月は思った。しかし、それを言ってしまえば自分にも当てはまりそうで話を振られても困るため、心の中で同意するに留める。
「よーし、この目で確かめてやろうぜ! その吹雪って奴の実力を!」
これから加わる仲間に会えるのが楽しみなのだろう、円堂が笑顔で拳を握った。雷門イレブンが頷いたところで、タイミング良く瞳子と古株がキャラバンに乗り込む。
「さあ、出発するわよ」
＊
奈良を発って数時間。外はすっかり暗くなり、多くのメンバーは寝息をたてていた。つい先日まで全国大会に出場していたのだ、それから休む間もなく長時間の移動と試合が続けば、疲労が蓄積するのは当然のことだ。
「――えっ…、パパが見付かった!?」
突然、塔子が声を上げた。寝ていたメンバーもその声で目を覚ます。彼女の電話の相手はSPフィクサーズの角巣で、父が無事に保護されたことを伝えるものだったようだ。
「謎の宇宙人達に攫われていた財前総理が解放され、無事に保護されました。しかしこの数日間、どこにいたのかなどの詳細は明らかになっていません」
キャラバンを近くのサービスエリアに停め、雷門イレブンは音無のパソコンを囲んでいた。マイクと原稿を持ったニュースキャスターが話し終えると、音無は中継を映していたウインドウを閉じる。
木野と音無は「よかったじゃない!」「お父さんに会えますね!」と塔子に笑顔を向けた。
「東京には戻らないよ」
しかし、塔子は喜ぶどころか固く決意した表情で言った。初対面の時には父を助けると息巻いていた彼女の予想外の言葉に、マネージャーは「えっ?」と声を漏らす。
「あんな奴らは絶対許せない。…だから、皆と一緒にサッカーで戦う!」
塔子の脳裏に浮かぶのは、ジェミニストームによる一方的な試合だった。シュートをくらい続けて倒れた円堂の痛々しい姿を思い出して拳を握る。
「円堂、一緒に戦おう!」
「…よし。地上最強チームになろうぜ!」
2人は拳を突き合わせて笑顔を見せた。
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一森(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます! そのように言っていただけて嬉しいです…! 更新頑張ります(^^) (12月25日 2時) (
レス) id: a9a946d0de (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからも一森さんご自身のペースで頑張って下さい(◍•ᴗ•◍) (12月24日 17時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一森 | 作成日時：2023年9月16日 3時
