第31話 ページ32
「円堂、豪炎寺は?」
「…行っちまった」
「なんで止めなかったんだよ!?」
視線を落としたまま、円堂は小さな声で一之瀬の問い掛けに答えた。すかさず染岡が円堂に詰め寄るが、彼の視線は地に向けられたままで染岡とは目が合わない。
―――すまない、円堂。俺はお前達とは戦えない。
円堂が思い出すのは、別れ際の豪炎寺の横顔だった。初めは円堂も豪炎寺のことを引き止めようと必死に言葉を掛けたが、彼の目を見てしまってはそうすることはできなかった。
彼が横顔を背けた時、夕陽を受けて煌めいたもの――それは、チームメイトの制止を振り切ってまで固められた意志がどれ程の苦悩を伴ったものであるか、円堂に突き付けていた。
「あいつは…絶対、戻って来るよ」
あの円堂がここまで弱気になるなんて。彼の見慣れない姿に、染岡は拳を下ろした。
「なんだよ。豪炎寺の奴、1人でゲームセットかよ…」
再び訪れた沈黙の中、土門がぽつりと呟く。しかし、円堂がすぐに「違う」と否定した。雷門イレブンの視線が円堂に集まる。
「別れはゲームセットじゃない。出会いのための、キックオフだ!」
顔を上げて言い切った円堂には笑顔が戻っていた。
手も足も出ない強敵に大敗し、強力な仲間を失ってもなお挫けることのない心。円堂の存在がどれだけ雷門イレブンの支えになっていることか、出会って間もないが、如月は彼の偉大さを感じていた。
あの時の私とは正反対だ――きゅ、と左手首を握る手に力がこもった時、誰かの携帯が鳴った。
「“北海道、白恋中のエースストライカー･吹雪士郎をチームに引き入れ、戦力アップを図れ”…」
＊
「で、その吹雪士郎って誰だ?」
「なんで響木さんは、そいつをチームに入れろって言うんだ?」
先程鳴ったのは瞳子の携帯で、響木からのメールの受信を知らせるものだった。
瞳子と古株が北海道へのルートを確認している間、雷門イレブンは先にキャラバンへ戻り、吹雪士郎についての話で盛り上がっていた。
「――あ、分かりました!」
パソコンのキーボードを打ち込んでいた音がぴたりと止まると、音無は声を上げた。彼女の後方にいた雷門イレブンは、パソコンの画面を覗き込む。
「“熊殺しの吹雪”?」
「1試合10点、たった1人で叩き出した…」
「熊よりでかい…?」
「“ブリザードの吹雪”って異名を持つ…」
出てきた情報はどれも確実なものではなく、栗松の「噂ばっかりでやんす」という言葉に如月は頷いた。
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一森(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます! そのように言っていただけて嬉しいです…! 更新頑張ります(^^) (12月25日 2時) (
レス) id: a9a946d0de (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからも一森さんご自身のペースで頑張って下さい(◍•ᴗ•◍) (12月24日 17時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一森 | 作成日時：2023年9月16日 3時
