第21話 ページ22
その後も雷門イレブンは果敢に立ち向かうが、気力で埋まるような力の差ではなかった。ディフェンスをしようにも、シュートを止めようにも、ジェミニストームの武器であるスピードは雷門イレブンをのめしていった。
彼らの悲痛な叫び声が耳に入る度に、如月の頭の中で反響して心臓の鼓動を速くしていく。いつの間にかジェミニストームのメンバーと対峙することの恐怖よりも雷門イレブンを心配する気持ちが勝り、彼女の瞳は震えながらピッチを目まぐるしく駆け回っていた。
『……!』
そんな時、鬼道がパスカットに成功した。これまでジェミニストームに成す術のなかった雷門イレブンに衝撃が走る。如月も驚いた様子で、緊張で強張っていた表情から力が抜けた。隣にいた瞳子も同様の反応を見せる。
「豪炎寺!」
「よし、フリーだ!!」円堂がガッツポーズをとる。しかし、ボールを蹴り込む直前に豪炎寺の視界に入ったのはエージェントの姿だった。豪炎寺のシュートはコースを逸らし、ゴールポストに当たって炎が消えてしまった。
「ご、豪炎寺が…」
「ファイアトルネードを外すなんて…」
滅多にないエースストライカーのミスに、雷門イレブンは驚きを隠せなかった。これには本人も驚いている様子で、彼の瞳は揺れていた。
雷門イレブンを詳しく知らない如月にも、彼らの驚きっぷりから豪炎寺のミスがあり得ないものであることが伝わっていた。シュートの直前、豪炎寺の視線が僅かに引き留められていたことを思い出し、彼女はその地点に目を向ける。
『……ｯ!!』
如月は恐怖に息を呑んだ。
そこにいたのは、エージェントだった。サングラスをかけてグレーのロングコートに身を包む3人は、気味の悪い笑みを浮かべてピッチを見ているようだ。サングラスの所為で彼らが何を見ているのかは定かではないが、豪炎寺のミスと関係があるのではないかと如月は踏んだ。
＊
試合が再開し、ジェミニストームがスピードをもって雷門イレブンを翻弄する。
しかし、彼らのボールの流れを止めたのはまたしても鬼道だった。
「…!」
「いけ!! 豪炎寺、風丸!!」
2回目のパスカットに、これを受けたパンドラは目を見開く。鬼道はフッと口もとに笑みを携えると、彼の指示で上がっていた豪炎寺と風丸にボールを渡した。
向かい合った2人は、ボールを高く蹴り上げる。
「「炎の、風見鶏!!」」
2人が空中で蹴ったボールは、炎の翼を羽ばたかせながらゴールへ向かって飛んでいった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 73人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
一森(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます! そのように言っていただけて嬉しいです…! 更新頑張ります(^^) (12月25日 2時) (
レス) id: a9a946d0de (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからも一森さんご自身のペースで頑張って下さい(◍•ᴗ•◍) (12月24日 17時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：一森 | 作成日時：2023年9月16日 3時
