第19話 ページ20
「…ふん、我らも甘く見られたものだ」
円堂の言葉に、レーゼはそう溢す。彼は「いいだろう」と閉じていた目を開いて円堂を見据えた。
「二度と立ち上がれないよう、叩き潰してくれよう」
＊
「前回はあいつらのスピードに面食らって何もできなかったけど、今日は2回目だ。今度こそ俺達のサッカー、見せてやろうぜ!!」
試合開始前、雷門ベンチ。
円堂は両の拳を握って意気込みを見せた。雷門イレブンは彼の言葉に力強く頷く。
「奴らの武器はあの驚異的なスピード。ロングパスはカットされる可能性が高い、ショートパスで繋いでいくぞ」
「ああ! よし行くぜ、皆!!」
「「おう!!」」
円堂の掛け声で、チームが拳を上げて1つになる。その輪から外れてベンチに座る瞳子は、隣にいる如月を心配していた。
瞳子の影に隠れることができなくなった彼女は、震えながら左手首を掴んでいる。ジェミニストームのメンバーの顔を見ることが恐ろしく、ただ足下に視線を落とすことしかできなかった。
「加澄……」
そんな彼女の名前をピッチに立つレーゼが小さく溢す。
如月がいなくなってから、エイリア学園は彼女の行方の話題で持ちきりだった。厳しい練習に心身を擦り減らし言葉数の少なくなっていく彼らも、練習の前後に顔を合わせる度に彼女の名前を口にした。
各チームのキャプテンが1つの部屋に集められ星二郎からその情報を聞いた時、一際動揺していたのは、彼女の所属するチーム･ダイヤモンドダストのキャプテン――ガゼルだった。小さく震えながら左手で前髪を荒々しく梳かす彼の表情を、レーゼは怖くてまともに見ていられなかった。
「レーゼ様…」
隣のパンドラがレーゼと目を合わせる。彼女の思っていることがレーゼに伝わったのか、彼は「…分かっている」と僅かに顔を歪ませた。
星二郎に忠誠を示すのであれば、彼らのするべきことは決まっている。エイリア学園に従わない雷門イレブンを潰し、如月を連れ戻すこと――それができないのは、彼女が星二郎の考えに異を唱えていたことを知っていたから。エイリア学園に悩み苦しむ彼女の覚悟を無下にはできなかった。
青ざめた顔で震える彼女を目の当たりにしてしまえば尚更だ。
―――行こっ、加澄!
幼い頃、レーゼはよく如月の手を引いた。彼女が明るい笑顔を見せてくれることが嬉しかった。だが今の自分には、彼女の手を引く資格はない。
…ごめん、加澄。レーゼは言葉を飲み込んだ。
試合開始のホイッスルが鳴る。
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一森(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます! そのように言っていただけて嬉しいです…! 更新頑張ります(^^) (12月25日 2時) (
レス) id: a9a946d0de (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからも一森さんご自身のペースで頑張って下さい(◍•ᴗ•◍) (12月24日 17時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一森 | 作成日時：2023年9月16日 3時
