第17話 ページ18
「お前達地球人に我らが大いなる力を示すため、この地球に降り立った。我々は野蛮な行為は望まぬ。お前達の星にあるサッカーという1つの秩序のもとにおいて、逆らう意味がないことを示してみせよう」
モニターに映るレーゼは淡々と言葉を吐いていく。まるでこう言えと決められているかのように自分達のことを名乗る彼の姿に、如月は行き場のない怒りを感じていた。
とうとう彼らと対峙する時が来たことへの不安と入り混じり、心臓の鼓動が頭に煩く響く。
「探知しました。放送の発信源は、奈良シカTVです」
加賀美がインカムからレーゼの居場所についての情報を得る。それを聞いた雷門イレブンは、すぐに彼らのいる奈良シカTVへ向かうことになった。メンバーは近くに停めてあるイナズマキャラバンに向かって歩き出していく。
レーゼの声を聞いてから左手首を握ったままの如月の足は、地面に深く沈み込んでいるかのように動かなかった。震える瞳で俯く彼女の様子に気付いた木野が、如月の背中に軽く触れる。
「加澄さん、大丈夫…?」
心配するような優しい声で覗き込まれ、如月はハッと我に返った。強張っていた顔がぱっと解けると、木野に悟られないように笑みを見せる。
『大丈夫。ちょっと緊張しちゃって』
行こう、と言った如月に頷くと、木野は安心して「何かあったらいつでも言ってね」と微笑んだ。彼女の優しさに触れた如月の表情は僅かに影を帯びるが、2人はそれに気付かないまま雷門イレブンの後ろを歩き出した。
＊
「大丈夫か? 随分顔色が悪いけど…」
奈良シカTVに着いたタイミングで、如月は隣に座る風丸に声を掛けられた。つい数分前に木野にも心配されたことが思い出され、反射的に『そんなことないよ』と言葉が口を衝く。しかし風丸の声は木野の耳にも届いていたようで、キャラバンを降りてから再び彼女に声を掛けられた。
「やっぱり具合がよくないんじゃない…? 今は無理しないで休んだ方がいいよ」
『でも――』
「如月さん、あなたは今回ベンチにいなさい」
木野とのやり取りが聞こえていたのか、いつの間にか如月の背後にいた瞳子にそう告げられる。彼女は『私は大丈夫です…!』と振り返った如月の懇願するかのような瞳をじっと見つめた。瞳子の眼差しは揺るがず、これに負けた如月は『…分かりました』と視線を落とす。
「さあ、行くわよ」
瞳子の呼び掛けで雷門イレブンはエレベーターに乗り込む。
左手首を握る如月の背を瞳子が優しく撫でた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 73人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
一森(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます! そのように言っていただけて嬉しいです…! 更新頑張ります(^^) (12月25日 2時) (
レス) id: a9a946d0de (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからも一森さんご自身のペースで頑張って下さい(◍•ᴗ•◍) (12月24日 17時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：一森 | 作成日時：2023年9月16日 3時
