第14話 ページ15
後半開始早々、鬼道が館野からスライディングでボールを奪う。豪炎寺の「ナイスディフェンス」という声に親指を立てて返すと、攻め上がろうと相手フィールドを見てハッとした。
裏が空いている…、そう気付いた鬼道はサイドから上がっていた豪炎寺にパスを出す。これを先手にカットされるが、すぐに如月が取り返して鬼道へボールを渡した。
「豪炎寺、上がれ!」
そう言って豪炎寺に出したパスは財前によって奪われてしまう。鬼道がすかさず財前へプレッシャーをかけると、彼女がボールを場外へクリアした。
「鬼道! 大丈夫か?」
「ああ。お前はゴールの守りに集中しろ!」
忙しなく動き回る鬼道に円堂が声を掛ける。鬼道の返事に円堂が頷くと、彼は持ち場へ戻って行った。
「(不思議だ。さっきまでとは違って、思い通りに試合が動く…)」
「クソｯ!! これで勝てたら漫画だぜ!!」
前半と違って人数が足りず大人相手に不利な状況である筈なのに、ゲームメイクがしやすくなっていることに鬼道が気付く。だがベンチにいる染岡はそんなことを知る由もなく、隣にいる瞳子に聞こえるように大きな声でわざとらしく言うと彼女を睨んだ。
＊
「もう! 怪我してたならどうして言ってくれないのよ!」
後半、ベンチへ下げられた3人は、ブルーシートの上に座りマネージャーから手当てを受けていた。木野は無理をしてまで怪我を隠して試合に出ていた3人に怒りながらも、風丸の患部に氷嚢を当てる。
―――あなた達、彼らにアイシングを。
瞳子に言われるまでマネージャーも気付かなかったようで、数分前、指示を受けた時に彼女らは「え…?」と驚いた様子を見せていた。
「だって、報告する程じゃなかったし…」
「1人でも多くの力が必要だと思ったんだ」
「動けない皆の分まで、俺達が頑張らなきゃいけないのに…クソｯ!!」
その様子をピッチから見ていた鬼道は、瞳子が後半に3人を外した訳を理解したようで、瞳子は「理解したようね」と静かに彼を見る。円堂と豪炎寺も彼女の意図に気付いたようだ。
「そうか! 怪我してる染岡達に無理させないために」
「そして相手を前に誘い出し、裏をつく攻撃をするために…」
「だから、8人で戦う作戦を…?」
「鬼道有人……彼なら人数的な不利を有利に変えられると思っていたわ」
『…! すごい……』
夏未の問い掛けにも応じず、瞳子は僅かに微笑む。それを見た如月は、出会って短時間で瞳子にこう言わせた鬼道に驚いて思わず声を溢した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 73人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
一森(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます! そのように言っていただけて嬉しいです…! 更新頑張ります(^^) (12月25日 2時) (
レス) id: a9a946d0de (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからも一森さんご自身のペースで頑張って下さい(◍•ᴗ•◍) (12月24日 17時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：一森 | 作成日時：2023年9月16日 3時
