218#魔除と探求心 ページ27
(Side,折)
朝餉を終え、自室に戻ると部屋が荒らされていた。
「おっ……と、これは何があった」
辺りを見回すと、目に入る犯人候補は一人。
否、一頭。
「五虎退の虎かよ……。
でかくなったから成長したかと思ったのに……。
って……んん!?」
待った。
何だ。
魔除けの術が切れてる。
急いで術式の根元である床の石板を見ると、
普通に砕かれていた。
「うっそだろ、おい……」
退魔結界を張り、
邪悪なものが入り込まないようにしていたのだ。
それが砕かれた。
現状、宜しくない。
「っ……石板は使えないからな……」
辺りに支障がない程度に、
柱などに退魔術を施し、虎を捕獲。
「よくもやってくれたな」
俺がわしゃわしゃと毛を乱しながら、
そう言うと虎は甘えてきた。
いやいや、怒ってんだよ……。
『折様……?』
「あ……」
『部屋……。もしかして、荒らされました?』
其処へやって来たのは俺の癒し。
これ、一期の前で言ったらすごい形相で睨まれそうだよなあ……。
「魔除けの術式を司ってた石板を割られたよ」
『だ、大丈夫なんですか!?』
「別の術施したから、多分平気。
Aはどうしたの?」
『そろそろ術式を書き始める頃合いかと思いまして、
お手伝いに参りました』
「そっか。んじゃ、やりに行こうかな。
熱で寝込んでただでさえ時間食ってる訳だし」
石切丸がしまっておいてくれたという血液瓶と、
筆を持つと、俺は部屋を後にした。
五虎退の虎は、彼が眠っている部屋へと送り届けた。
『……人とは不思議なものですね』
「え?」
『あの、折様。
折様のお家の成り立ちを教えて頂けませんか?
あの、お名前を聞いた日から聞いてみたくて。
……だめ、ですかね?』
たまに聞く。
主である審神者に、刀剣が似ることがあると。
Aも俺に似たのか、
こうした質問を持ってくるようになった。
「教えてもいいよ、別に。減るもんじゃないし」
守篠、というのは元は“
という表記を用いていたらしい。
その字の通り、【神をも凌ぐ】という意味だ。
それで、やっぱりなんだけど、
神様の怒りを買ったらしい。
それから贄を捧げる制度が出来上がったと聞いている。
俺がこうして神に与えられるのも、
かつての御先祖様のせいだ。
ま、結果オーライだけど。
(とんでもない御先祖様ですね)
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作者名：久遠深ヶ | 作成日時：2017年1月15日 17時
