鶴と虎と。終【刀剣乱舞】 (ページ26)

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217#不寝番と朝餉ページ26

(Side,折)

目が覚める頃には熱も下がり、

辺りは真っ暗で行灯の明かりだけが頼りだった。

「……今夜の不寝番は誰だったんだっけ」

「僕です。あるじさま」

隣の部屋の襖が開いて、吃驚した。

「!? はー、何だよ、五虎退か。びっくりした……」

「す、すみません……。あの、体調はいかがですか?」

「大丈夫。今夜、もう少し寝たら、また頑張るから」

「……A様、すごく心配してました。

　だから、朝になったら声をかけてあげて下さい」

俺はそれに頷くと、五虎退を隣の部屋に帰し、

布団に潜り込んだ。

確かに熱は下がったらしいが、

何となく身体が怠かった。

そして、微睡みへと落ちていった。

再び目が覚めると、

枕元で片付けをする五虎退がいた。

「あ、おはようございます」

「ん、おはよ」

「もうすぐ朝餉出来るそうなので、

　身支度は済ませておいて下さいね」

「おう」

適当な着物を引っ掴んで、姿鏡の前に立つ。

夜着をパサリと落とすと、身体中の傷が顕になる。

「……」

「あるじさま」

「ごめん、何でもない。

　五虎退、簪だけ選んでおいて。好きなのでいいから」

「! はい、分かりました」

背に残るのは、典厩割で斬られた時の刀傷の跡。

俺が五虎退に簪選びを頼むと、

彼は嬉しそうに選び始め、白い簪を俺の手に乗せた。

「ありがと」

「いえ」

身支度を済ませて五虎退と共に大広間へ向かうと、

Aが飛び付いてきた。

「おっ……と」

『もう平気なんですか』

「一応」

『心配したんですからね!』

「ごめんなさい」

謝る俺を横目に、Aは俺の隣の五虎退に構った。

『……五虎退、不寝番お疲れ様。

　食事が終わったら寝ていいですからね』

「はい、A様」

Aに撫でられて満足そうな五虎退。

うん、すごく可愛い。朝から天使。

「主さん。

　昨日は殆ど食べてないからお粥にしておいたからね」

「あー、堀川ありがと」

「いえいえ!」

さて、今日も頑張らないとなあ……なんて。

(たかあまはらにかむづまりますかむろぎかむろみのみこともちて――)
(何をブツブツと言ってんだ? 主)
(何でもなーい)