鶴と虎と。終【刀剣乱舞】 (ページ12)

今日:8 hit、昨日:0 hit、合計:35,038 hit

203#真名と呼声ページ12

(Side,Nothing)

「あるじさま、五虎退です」

「入って」

「はい、失礼します」

凍泉と折の分の茶を運んで来た、五虎退。

廊下には虎が控えていた。

「君が五虎退か」

「は、はい」

「こんなに幼い付喪神もいるんだな……」

凍泉は恐らく五虎退の容姿を娘と重ねたのだろう。

ひどく優しい目をした。

「……」

「いつ、いなくなるかも分からないから、

　手紙だけ書いたんだ。持って帰って」

折はそう言うと、

引き出しから3通の手紙を取り出し、凍泉へと渡した。

それぞれに“父さんへ”、“母さんへ”、“鷹取へ”、

“午時葵の君へ”と書かれ、折を表す印が付されていた。

「此処で読んではいけないか?」

「ダメに決まってんだろ。真名書いてあるし」

「鷹取は飾り名だが」

「それは、アイツ……審神者だし。家空けてるだろうと思って」

折は「いいから、家で読んで」と言い、

凍泉と目線を合わせた。

「分かった。渡しておく」

凍泉が手紙を懐にしまい込むと、Aが口を開いた。

『……折様、私と五虎退はお暇しますので、

　どうか、お二人でお話なされて下さい』

「ぼ、僕も……その方がいいと思います」

「うん、そっか。気遣いありがと……。

　辺りの人払い頼める?」

『はい、確かに承りました』

Aは五虎退を連れ、

凍泉に礼をすると部屋の外へと出た。

すると、其処には先程まで手合わせをしていた小烏丸たちがいた。

「A、どうだった」

『私からは、何も。

　親子水入らずでお話しして欲しかったので私たちは出てきたんです』

「そうか」

『それと、人払いを頼まれましたので此処からは離れましょう』

小烏丸はそれに頷いた。

「鯰尾兄さん、骨喰兄さん。

　此処は居てはいけないそうなので、別のところに行きましょう」

「そうなのか」

「はいはーい、俺、Aさんと遊びたい!」

『では、大広間に参りましょうか』

(祈与)
(!? あはは、久々に呼ばれたなあ……。ね、父さん、もっと呼んで)
(祈与、立派な術士として、審神者として成長していて私は嬉しく思うぞ)
(……よかった)
(祈与、成すべきことを、全うしろ)
(あぁ)