202#新事実と審神者 ページ11
(Side,A)
『折様、御父上が参られております』
「ふーん、父上……小烏丸?」
私が“御父上”と言うと、
刀剣の父である小烏丸様の方を連想してしまうらしい。
『折様の御父上です』
「は!? ちょ、待って! 今片付けるから!!」
バタバタと書類などを片付ける音がしばらくした後、
スッと障子が開いた。
「入って」
『はい。凍泉様、どうぞ』
「……」
五虎退が厨へ向かうのを横目に、
私は折様の斜め後ろについた。
部屋の中の霊気が一気に跳ね上がった気がする。
「お久し振りに御座います」
「よせ、そんな堅くなるな。
親と子だ。当主と後継じゃない」
「……分かった。それで、今日は何?」
「お前の顔を見たくなったのと、此方の近況をな」
「そう」
折様は苦笑していた。
「この子がお前に託された刀剣か」
「あぁ。
Aのことだから自己紹介してると思うけど、聞いた?」
「あぁ、とても礼儀正しい方だ。誰の刀だったんだ?」
折様は私の方をちらりと見た。
恐らく、答えて良いと仰りたいのだろう。
『上杉謙信公にございます。先程の五虎退も同じく』
「そうか。いつも息子が世話になっている」
『いえ、此方こそ。
折様には、日々、とても感謝しております』
凍泉様は折様の御父上らしくとても優しい。
「して、折。後継者の問題だがな」
「分家から出すんだろ? 何処の奴にした」
「否、お前に妹がいる」
「ふーん、妹。は!? 妹!? 俺に!? いつ!?」
新事実。
折様に妹君がいたらしい。
これには私も驚いた。
「今年で5つになる」
「待て待て待て。5歳!? 俺何歳だ。てか母さん、え!?」
『折様。折様は今年で23歳になりますよ』
「18の時……には、いたってことか。
母さんが俺生んだのが19だから、37……」
聞いたところによると、
人というのは
安定的に“やや”を宿すことが出来るらしく、
それを越えると色々と大変らしい。
そう考えると、ギリギリ……。
「私は、それを後継に据える。
お前はもう何も心配しなくていい」
「……そっか。よかったよ、気にしてたから」
「……すまんな」
この会話には、贄の話のことも混ざっているのだろう。
(成すべきことを為せ。いいな)
(……分かってる)
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作者名：久遠深ヶ | 作成日時：2017年1月15日 17時
