193#守篠と審神者 ページ2
(Side,折)
――祈与、お前は神に尽くすべく生まれた守篠の子じゃ。
――ババは、祈与を立派な術士として、審神者として教育すべく、此処にいる。
――祈与。お前のその力はまだお前の身には負担が大きすぎる。
――ババが
「……!!」
真夜中。
もう誰もが眠りについた頃。
俺は飛び起きた。
夢に出てきたのは、俺の祖母。
術士としては、師に当たる人。
「神に尽くすべく生まれた……か」
父さんは何も言っていなかったけど、
いつも寂しそうな目をしていた。
俺が審神者になるべく育てられ、
そして、本丸から帰ることはないと知っていたから。
「婆さん、俺はどうするために……」
――いいかい、祈与。
――お前の才能は守篠にとってとても重要じゃ。
――じゃがな、祈与は……。
「思い出せねぇ……」
大事なことを言っていた気がする。
チビの頃はあんまり気にしてなかったからなあ……。
「うーん……」
その時、俺の独り言に気付いたのか、
今夜の見張り番である薬研が隣の部屋から声をかけてきた。
「大将? 起きてんのか……?」
「あぁ、ごめん。ちょっと起きちゃって」
「そうか。そっち、行ってもいいか?」
「おう」
そう答えると、夜着姿の薬研がそそーっと入ってきた。
そして、俺の前に胡座をかいて座った。
「どうした。魘されてるような感じはしなかったが」
「……昔、婆さんに言われたこととか思い出して……」
「審神者だったっていう大将の婆さんか」
「そうそう。それで、何かを言われたんだけど……。
多分大事なこと、忘れてるんだよな」
「何だそれ」
薬研はクスクスと小さく笑う。
“寝ぼけてたんじゃねぇのか”と薬研は言うが、
寝ぼけてはいないと思う。うん。
「神に尽くすべく生まれた子。そう言われて、
術士として、審神者として育てられた……」
「神に尽くすべく生まれた子……?
だが、大将の家は術士の家だろう?」
「そのはずだけど」
「普通なら退魔や何やら、そういう系統の家業だろう?
神に関係するような……。
あぁ、でも審神者を輩出する家だもんな」
きっと審神者という仕事の他に何かがある。
そういえば、守篠の敷地内には神社がある。
どんな神様が奉ってあるかは知らないが……。
(家の敷地内に神社がある)
(神社? 何でまたそんなもんが家なんかに)
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作者名：久遠深ヶ | 作成日時：2017年1月15日 17時
