あのね、そんでね、それでね ページ23
ヴァーチェ「…ふ、そっか。僕も寂しいなぁ」
とてもか細く、そう呟いたヴァーチェさんの頬は濡れていた
私も隣に立ち止まり、スッとヴァーチェさんから目を逸らす
きっと泣き顔なんて見られたくないだろうから
それに今泣かれては、私も歯止めが効かなくなる
『そうですか。私と一緒なんですね、嬉しいです』
いつもは出来ない素直な言葉が自然と出てくる
同じ寂しさを抱いてくれる相手に対し、”嬉しい”なんて思ったらいけないのだろうか
ヴァーチェ「……今のは泣いたんじゃなくて、能力がコントロールできなかっただけだから。
勘違いしないでよね。さっ、早く行くよ！」
やっぱり恥ずかしのか、それとも私を元気づけようとしたのか
大股でどんどん進んでいく優しい師匠に、私は笑みを漏らした
そして紅葉に吸い込まれていく
月明かりに照らされて
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
ついに、着いてしまった
私とヴァーチェさんが初めて出会った、あの場所
最初と同じく紅葉の咲き乱れるその姿は、いつもより一層美しい
「Aちゃんに坊主、待ちくたびれたぜ」
突然声が響き、私の船出用の船からひょっこり現れたのは、男気溢れるおじさん
船を作ってくれた、船大工さんだ
ヴァーチェ「ボウズじゃないっての！ もう３０代！」
おじさんの見え透いた挑発に容易く乗せられるヴァーチェさんに、おじさんは長めの金髪を揺らした
私はわざとらしくため息を吐いてみせる
「ガッハッハッ！ 変わらんなぁ、お前も。
それよかAちゃん。早く出航した方がいいぜ。今は波が大人しくしてるからなぁ」
確かに波は静かに待っている
というか私に波の問題なんて関係あるのだろうか…
一応、海の能力者なわけだし
どうするべきか迷って、ふとヴァーチェさんを見ると一瞬だけ目が合った
ヴァーチェ「今行った方がいいよ。無駄に体力は消耗しない方がいい」
なるほど、それもそうか
私は勢いよく地を蹴り、船へ飛び乗る
『ではヴァーチェさん、行ってきますね』
ヴァーチェ「……うん、行っておいで。そんで帰ってきて、お話聞かせて。
それでね、また一緒に修行しよう？ もっとビシバシ厳しくするからさ。
それでね、それでね……」
ずっとずっと、「それでね」を繰り返すヴァーチェさん
……声が震えてるの知ってるんですよ？
胸に刃物が刺さったみたい
ヴァーチェ「ごめん、うまく言葉が出ないや…」
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蒼海(プロフ) - すごく気になります！！！更新頑張ってください！応援しています！！ (2021年12月25日 23時) (
レス) id: 34a1071b4a (このIDを非表示/違反報告)
にゃあ - 凄く気になる所で終わった！このままにしたら許しませんよ！！ (2020年9月12日 11時) (レス) id: 91b3f57d74 (このIDを非表示/違反報告)
雪夜乱気(プロフ) - 気になるー更新待ってます (2019年9月12日 13時) (レス) id: 6c646fcda2 (このIDを非表示/違反報告)
チイナ - とても面白いです！続きが気になるので更新待ってます！頑張ってください！ (2019年1月4日 7時) (レス) id: f759a37db1 (このIDを非表示/違反報告)
イゾウRAVU - とっても面白いです!!これからも頑張ってください！更新待ってます！ (2018年12月5日 21時) (レス) id: 0e771d3d36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蛍ノ茶 | 作成日時：2016年10月22日 20時
