抑えきれなかった感情 ページ22
私はクローゼットに近付き、三つ編みにエメラルドグリーンのリボンを絡ませる
この方法もヴァーチェさんが教えてくれたっけなぁ…
鏡で三つ編みを確認すると、ギィとクローゼットを開けて衣服を取り出す
バッサバッサと積み重なっていく衣服の半分は、ヴァーチェさんがお金を出してくれたものだ
『さて、後は風呂場のタンスにあるので全部かな』
新品のリュックは想像以上に大きく、まだまだ余裕があった
行きと同じように足音を立てず、風呂場へ行って服を詰める
『あとは食料だけかな。長持ちする缶詰系がいっぱい欲しい』
窓から差し込む茜色はさらに濃さを増している
リビングへ戻ると、ヴァーチェさんが大あくびをしているところだった
ヴァーチェ「あぁ、もう起きてたんだね。荷物はもうバッチリ？
って、それは……」
『素敵なプレゼントをありがとうございます、愛師匠さん』
わざと悪戯っぽく笑ってみせると、向こうも恥ずかしそうに笑った
差し込む日差しのせいか、それともカードに綴ったことへの気恥ずかしさのせいなのか
ヴァーチェさんの頬はほんのりと赤かった
ヴァーチェ「さっすが僕が見立てただけあるよね。すっごく似合ってる。
もう衣服類はまとめたんでしょ？ じゃあ後は食料品だね」
ちゃんと買ってあるよ、と何故か誇らしげなヴァーチェさん
こんないつものヴァーチェさんを見れるのも、あと数十分
ヴァーチェ「これとこれと、これと…。早く食べなきゃいけないけど、ご飯とパンも入れるね」
『ありがとうございます、こんなに沢山』
余裕があったリュックも限界になり、もし足りなくなったらこのお金で買え、と大金まで渡された
うっ、さすが元伝説のクルー……財力は有り余ってそうだ
『六時過ぎ……か。ヴァーチェさん、そろそろ』
ヴァーチェ「…そっか、もうそんな時間か。早いね」
ニコニコと笑っていたヴァーチェさんだけど、時間を聞いた途端に笑顔が消えた
そんな顔されては抑えていたものが出そうになる
あぁ、目が霞む…
ヴァーチェ「さぁ、行こっか。大事な愛弟子の船出だ」
『はい』
声は震えていたと思う
常に一緒だったヴァーチェさんとお別れなんて、実感が湧かなかった
でも今は、とてつもなく一つの感情に心を支配されている
ヴァーチェさんと船のある海へ行く、その一歩一歩が……惜しい
茜色は消え失せ、薄暗い闇が身を包む
『寂しい』
心と口から零れた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 637人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼海(プロフ) - すごく気になります！！！更新頑張ってください！応援しています！！ (2021年12月25日 23時) (
レス) id: 34a1071b4a (このIDを非表示/違反報告)
にゃあ - 凄く気になる所で終わった！このままにしたら許しませんよ！！ (2020年9月12日 11時) (レス) id: 91b3f57d74 (このIDを非表示/違反報告)
雪夜乱気(プロフ) - 気になるー更新待ってます (2019年9月12日 13時) (レス) id: 6c646fcda2 (このIDを非表示/違反報告)
チイナ - とても面白いです！続きが気になるので更新待ってます！頑張ってください！ (2019年1月4日 7時) (レス) id: f759a37db1 (このIDを非表示/違反報告)
イゾウRAVU - とっても面白いです!!これからも頑張ってください！更新待ってます！ (2018年12月5日 21時) (レス) id: 0e771d3d36 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蛍ノ茶 | 作成日時：2016年10月22日 20時
