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貴「へえ、珍しいな。いいよ」
連れられて来たのは小さな池だった。鬱蒼と繁った老木の枝枝が頭上を覆う。息を潜めた虫たちの鼓動や水底の魚たちの呼吸。二人分の息遣いを掻き消すに造作もない圧倒的な静があった。
何をしようと言うのだろう。綺麗な場所が見たかったのだろうか。確かにここは、緑生茂る季節も今のような冬も綺麗だろう。
苔の生えた平たい岩が水の上に張り出した場所があった。百鬼丸はAの手を引いてそこに座らせた。
百「見て」
素直に指の示す先に目をやると、そこには自分が映っていた。
百「逸らすな」
咄嗟に目を瞑れば穏やかに諭され、再び目を向けた。
最後に自分の顔を見たのはもう何年も何年も前、否、地獄堂で死骸を見た。
百「A、綺麗だ」
貴「俺、は、」
昔から鏡が嫌いだった。あらゆる醜悪な物に塗れた顔が映るから。自分の死顔が歪み、凶悪な怪物に変わる幻覚を繰り返すうち、もはや覆せぬと、せめて二度と醜い姿は見るまいと思いこんだ。
百鬼丸に抱き寄せられても目を離せない。
百「どこも俺と違わない。お前と俺は同じ」
貴「同じ…」
目を閉じても赤い炎はどこにもない。まるで人間みたいだ。
百「こうしてれば、誰もAが鬼なんて言わない。本当のお前を知ってるのは俺だけでいい」
あまりにも毅然とした態度で曰うものだから。それで、いいなと思った。
閉じ込めんばかりに抱きしめる腕に。こうも容易く籠絡されてしまう。
後にどろろが百鬼丸に言った。心が人を人たらしめるのだと。鬼でも人の心を宿すのだと。
俺を見てそう思ったのだと語ったらしい。
百鬼丸とAがどろろのいる村に戻ることはなかった。
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藤宮(プロフ) - 有希さん» はい。頂いたレスで集大成だと仰っていたので描きたいなと。夕陽ちゃんの男前さより寄り添う感じが強くなってしまいましたが…完結祝いありがとうございます、危うくうちの子なのに恋しかけました。 (2019年7月26日 17時) (
レス) id: f3757ca821 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 白頭鷲ですか！？ありがとうございます。私も椿くん描きました。藤宮さんの作品の紹介ページにはりました。よかったら見てくださいな。 (2019年7月26日 8時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - 有希さん» 遅れ馳せして申し訳ありません。祝完結イラストこちらに上げました。安定の低クオリティですが、気に入っていただけると嬉しいです。完結おめでとうございます。 (2019年7月25日 22時) (レス) id: f3757ca821 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 嬉しい言葉をありがとうございます。姫抱き感謝です。男前意識してます。か弱くって守られてる子は女としては魅力的ですが、人としてはかっこ悪いと思うので。自分の頭で考えて動ける子目指してるので、そう言っていただけて嬉しいです。ぜひ椿くん描かせてください。 (2019年7月13日 19時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - ほんとあなた好き。一番読んでほしいところをわかってらっしゃってて。白頭鷲の話が私の集大成みたいなものです。箸休めみたいに入れましたが。鵜の話まで…！あれ実話です。２年も前に見ただけなのに未だに忘れない節回し。せっかくなので投入しました。安定の長文 (2019年7月13日 18時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤宮 | 作成日時：2019年5月20日 16時
