33 ページ32
百「人間になるには、何が要る？」
旅の始まりに、百鬼丸にそう質問された。ごもっともな疑問である。
貴「それを見つけるための旅だろ？」
Aもわからないものだから、こう答えた。
考え込む頭の中では、誰も及ばない複雑な事物が詰まっていることだろう。名前も知らない物を記憶し利用するのは極めて困難だ。百鬼丸は利発だ。
だからきっといつかは掴まえる。
心は知識か、経験か。
貴「見当をつけておけば少しは参考になるか？」
百「うん。…殺さない、傷つけない。どうして？」
貴「怪我したら、痛いだろ」
百「うん」
貴「痛いのは嫌だ。自分がされて嫌なことは、他にしちゃ駄目だ。盗みも殺しも」
百「でも、みんなしてる。みんな人じゃない？」
貴「奪わなければ危険に晒されるときは必ずある。本当はしたくなくても。
でも後々自分を許せなくなって忘れようとするんだ。
忘れないでいて、ずっと悔いることは必要だと俺は思う」
奪われる辛さも優しさも百鬼丸は充分知ってる。
相手に与えようとする意志とその方法、敵にそれを求めるのは、戦う者なら尚更難しい。
加えて、遺された者にも。
貴「例えば俺が誰かに殺されたり傷つけられたらどう思う？」
百「そいつを許さない、絶対」
貴「そう思うやつが、誰にでもいるってことだよ」
一人殺せば墓穴は一つでは済まない。心があるから、そんな悲しみが存在する。同時に喜びも楽しさも。
教わるだけでは駄目だ。自分で会得しなければ。
それらを俺が示すのはどうにもしっくりこない。
貴「話を聞いてほしいだけだ、武器を下ろしてくれ！」
翁「それ以上やるつもりならこっちにも考えがあるぞ！」
何度目かの訴えも無視された挙句。
なんで捕まってるんだ、百鬼丸。お前にとっちゃ包囲など紙同然だったろうに。
貴「どうするつもりだ」
翁「教える義理はない。こいつを想うなら大人しくしておくのが吉だぞ」
貴「武器を下ろしてくれれば何もせず立ち去るからどうかそいつは傷つけないで」
翁「検討しよう。そこに直れ」
いつのまにか化け物は両側にいて今にも襲いかかりそうにしていた。形勢非常に不利。
検討しようなど信憑性のない言葉だ。だって目が語っている。逃しはしない、と。
縄抜けは造作ない。だからあとは、最悪の手段を取らなくて済むといい。
「そいつを放してくれるならなんでもするから頼む」
名前変換できるようにしました。
10.22.2019
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藤宮(プロフ) - 有希さん» はい。頂いたレスで集大成だと仰っていたので描きたいなと。夕陽ちゃんの男前さより寄り添う感じが強くなってしまいましたが…完結祝いありがとうございます、危うくうちの子なのに恋しかけました。 (2019年7月26日 17時) (
レス) id: f3757ca821 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 白頭鷲ですか！？ありがとうございます。私も椿くん描きました。藤宮さんの作品の紹介ページにはりました。よかったら見てくださいな。 (2019年7月26日 8時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - 有希さん» 遅れ馳せして申し訳ありません。祝完結イラストこちらに上げました。安定の低クオリティですが、気に入っていただけると嬉しいです。完結おめでとうございます。 (2019年7月25日 22時) (レス) id: f3757ca821 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 嬉しい言葉をありがとうございます。姫抱き感謝です。男前意識してます。か弱くって守られてる子は女としては魅力的ですが、人としてはかっこ悪いと思うので。自分の頭で考えて動ける子目指してるので、そう言っていただけて嬉しいです。ぜひ椿くん描かせてください。 (2019年7月13日 19時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - ほんとあなた好き。一番読んでほしいところをわかってらっしゃってて。白頭鷲の話が私の集大成みたいなものです。箸休めみたいに入れましたが。鵜の話まで…！あれ実話です。２年も前に見ただけなのに未だに忘れない節回し。せっかくなので投入しました。安定の長文 (2019年7月13日 18時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藤宮 | 作成日時：2019年5月20日 16時
