Fatezero/FANTASIA (ページ8)

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第二話後編ページ8

「さ、私の聖杯戦争はこれからだよ」
魔術に掛かって寝入った自身のマスターを起こさないようにそっとベッドから這い出て窓を開ける
「私がいる限り、マスターは死なせない」
黒いライダースーツに一瞬で身を包み、街の闇夜にその身を溶かす

冬木市郊外に存在する未開の森、その樹上を吹き抜ける一陣の疾風があった。人よりも荒々しく、獣よりもしなやかなそれはやがて一つの城に辿り着く
「ここが拠点の一つ…魔力の質と量から想像するにかなりの大英雄っぽいね」
もちろん森にも対侵入者用の結界が張ってある。しかしこの存在は、大家アインツベルン謹製の結界に一切検知されずにいとも簡単に拠点まで辿りついた
「よし、行こうか」
太い枝の上から跳躍し、城の壁に張り付く。敷地内には更に厳重は侵入者用の魔術結界が張り巡らされている。それを全てすり抜け、無効化し、受け流し、本拠地に足を踏み入れる
「……こっちか」
壁を登り、ある一室を目指す。幾重にも張り巡らされたトラップ、それを一つでも踏めば全てが終わる。『視える』魔力の隙間を狙え、『感じる』流れに身を任せろ。己のマスターを守るため、あらゆる力を行使せよ
「ほい、到着っと」
と、そんな盛大な地の文も何のその。ひょいひょいと結界を回避しながら目的の窓に辿り着く
「どーれどれ？」
慎重に部屋を覗く。視界に映るのは二人の女性と一人の男性、全てが魔術と関わりのある存在であることは疑いようもない
「お、か～わいい」
窓を覗きながら小さく呟く。金髪の少女はサーヴァント、白い髪の女性はホムンクルスである事は『視えた』。人であろうとなかろうと、可愛いものはやっぱり可愛いよね？
「この距離じゃ流石に詳細までは見えないか」
悔しげに舌打ちを落とす。しかし分かった事もある。陣営の一つは少なくとも三人、実力は未知数だが、直接戦闘に於いて自身のマスターに遅れを取る者はいないだろう
「ま、今日は引き上げますか」
深追いは禁物とばかりに、壁を無音で蹴って大きく後退する。再び木の上に着地した後、屋敷に背を向けて森を走る
こうして、天宮遥の聖杯戦争1日目は終わりを告げた