Fatezero/FANTASIA (ページ11)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:6,902 hit

第三話③ ページ11

発端は少し前に遡る。早速、参加者の情報収集の為に動き出そうとしたところ
「あ、ちょっと待っててね～」
と、部屋から追い出されて三十分。未だにサーヴァントは出てこない
「なぁ、ライダー？何してるんだ？」
ドア越しに声を掛けてみる。聖杯戦争に対するやる気がないわけでもない、加えて行動も論理的だ。しかし、どこかに腑に落ちない何かがあるのも確か。サーヴァントとはいえ、やはりよく分からない存在ではある
「お待たせ～。待った？」
噂をしていた訳では無いが影が差した。タイミング良くドアを開けて現れる天宮
「……ライダー？その服は何だよ」
「えっへへ～、かわいいっしょ？」
ふわふわと揺れる白いロングスカート、ちょっと大きめのカーディガン。艶やかだった黒髪は何故か鮮やかな茶髪に変わり、見事なウェーブを描いている
つまり、戦う気など全く感じられない服装なのだ
「今日は周辺の地形の確認。なら一般人に紛れ込まないとね」
と、適当な理由をつけてニパーっと満面の笑顔の天宮、元からお洒落が好きな性格なのかもしれない。しかし、その趣味の前には高い壁があった
「でもマスター同士、サーヴァント同士は感知できるんじゃないのか？」
そう、相互感知が出来る故に変装は気休めにしかならない。であればもう少し動きやすい服装を選択するのが正解だろう
「ふっふっふっ。甘いよウェイバー君、私がそこまで気が回らない女だとでも？」
不敵な笑顔を浮かべる天宮に不安げな顔のマスターが問う
「何を根拠にそんな自信が出てくるんだ？」
余裕綽々、と言った表情で天宮は答えた
「じゃあ聞くけど、私からどの程度の魔力を感じる？」
その言葉でウェイバーは何度目かの驚愕と納得を味わう
『お前、本当にサーヴァントなのか？』
どうしてそう思ったのか、その理由がそこにあった
目の前の女性からは微弱な、それこそすれ違えば少し気になる程度の魔力しか感じ取れなかったのだ
「まぁ、生前ちょっと隠密と縁があったりなかったりね」
不思議な表情から察したらしく、ニコニコと笑いながら言う。そして手を掴んで走り出す
「そんな事より行こっ、ウェイバー君！」
満面の笑みで手を引くサーヴァント
「わわっ、待てよライダー！」
振り回されるマスター
不思議で楽しげな、ちょっと平和な二人だった