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すやすやと幸福そうに眠るマスターの横顔を、優しく撫でる。
「……ゆずとかいうマスターの友人には次会った時には礼を言わなくてはな。」
小さくそう呟いて、ちゅ、と愛しい人の額にキスを落とす。
「本当に困ったものだ。」
セイバーの時は、確かに一目惚れだったと思う。
まぁ最も、もうちゃんと覚えている訳では無いのだが。
だとしても、マスターとの出会いの__召喚の形があれ程までに似通っていてマスター側の態勢まで同じで__つまりマスター側が尻もちをついている、という事だが__、その状況でまた一目惚れしたのだとなれば、自分はあの状況では一目惚れする、という呪いか何かにかかっているのかもしれない。
マスターが眠るベットに腰かけてみるとぎし……と小さな悲鳴を上げる。
起こしてしまっただろうか、と寝顔を覗くと、ん……という小さい訴えてくる声と共にもぞもぞと寝返りを打つだけだった彼女に私はほっとする。
……いや、まぁもう6時前なので起きても良いとは思うのだが、流石にこの状況で目を覚まされるのは後味が悪いというか罪悪感があるというか。
昨日の夕方の「Aに人生を捧げたい」という言葉自体は心の底から想い、出た言葉だ。
故に、拒絶されたこと自体は……嗚呼、そうだな。
__正直な所、とても傷付いた……というべきだろう。
けれど、この気持ちを否定された訳では無いのだ。
「まだその時ではない」という判断を下させてしまっただけなのだ。
……ならば。
「君を救って手に入れてみせよう、A。物語の
__何一つとして、諦める事は無いのだ。
ベットから腰を上げ、愛するマスターを起こす。
美味しそうに料理を食す姿はセイバーに、寝起きの半分夢の中に居る様子は遠坂に、私には判らない理由で慕ってくれる所は桜に、直ぐに妬く愛らしさはイリヤに、私を1番大切な者として想ってくれる優しさは藤ねぇに似ていると思う。
けれど、君は一人しか居ないのだから、気にしなくて良いのだ。
「……おはよう、マスター。」
「おはよ……あーちゃー……。」
うとうとと二度寝の誘惑と戦う姿まで愛らしく愛しいと思えてくるのだから……嗚呼、“惚れた弱み”というのは恐ろしい。
「朝食の準備は出来ている。支度が出来たら来ると良い。」
「はぁい……。」
こうしてぽわぽわと笑う君の表情が一層愛おしく感じるようになっていく。
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セツナ(プロフ) - 推しが推ししてる。この状況になったら尊死するしかない (8月31日 10時) (レス) @page10 id: 2ea77c9340 (このIDを非表示/違反報告)
キラ(プロフ) - 初コメ失礼します。凄く面白くて、めちゃくちゃ好きです!!続き待ってます!! (2022年1月1日 23時) (レス) @page40 id: b207c7ff5b (このIDを非表示/違反報告)
minto(プロフ) - こんにちは!最近読み始めたのですが、序盤のエミヤくんが可愛すぎて悶えてました 。 まだ全てを読んでいないので分かりませんがこういうシーンをもっと増やしてくれると嬉しいでs((((( (2021年9月8日 15時) (レス) id: bfa34b5595 (このIDを非表示/違反報告)
業猫(プロフ) - ロゼファさん» コメント&応援ありがとうございます、私もなりたいです(笑)子ギル君良いですよね〜〜!!FGOでの大人のギル様達に対する反応とか可愛いなぁって思います……(笑) (2021年1月10日 18時) (レス) id: 3f4322bc19 (このIDを非表示/違反報告)
ロゼファ(プロフ) - こんにちは私も推しのマスターになりたいです更新頑張って下さいちなみに僕の推しは子ギルです(聞かれてない) (2021年1月10日 18時) (レス) id: f43344f619 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:業猫 | 作成日時:2020年12月15日 1時