一般人になるって、決めてたのに…！ (ページ11)

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ガァンッッ！！

突如、講堂の扉を破壊して犬のような生物が飛び込んできた。少し緊張が解れてきて、楽しげな会話がされていたその時、であった。一瞬にして講堂内は水を打ったように静まり返り、その場にいた者は皆、突然の訪問者に目が釘付けになった。

私は犬と比喩したが、我々人類の知る一般知識上の"犬"とはまるで違っている。

四つ足は肉が抉れて白い骨が飛び出しており、
鼻らしきものは潰れ、
向かって右目はキョロキョロと忙しなく動き、
左目は眼窩から腐り落ちるところを、何本か剥き出しになった神経が辛うじて繋ぎ止めていた。

これでも"犬"に分類されるなら、こいつは"犬"なのだろう。ただし、世界がこいつを"犬"と認めても私は認めない。絶対にだ。

とんでもない腐乱臭を撒き散らしながら奴は右目だけを動かしていた。耳まで裂けた口からは、ハッハッという息づかいが聞こえている。

_きっと奴は決定的な何かが起きない限り動かない_

私は、そう直感的に思った。元来犬…獣とはそういうものである。どちらかが目を反らしたり、背を見せたり、と隙を生むまで好機を虎視眈々と狙い続けるのだ。この状況でどちらが狙う側で、どちらが逃げようとする側なのかは言うまでもないだろう。だから私は、ゆっくりと後退り…
｢いやぁぁぁぁぁあ！！！｣
女子生徒が金切り声を上げる。

その声で我に帰ったのか、他の生徒教師は一斉に犬から遠ざかろうと、走り出した。
それを見逃す犬ではない。腐っても獣。本能のままに逃げる人間に襲いかかろうとする。

｢ガンド！｣

そう、させない為に私はいるのだけれど。