星のカービィトリップ小説--第一章--トリップの魔法--

4-8. 奇跡 ページ34

葵達はカワサキの店に向かっていた

しかし、舞い上がるような気分にはなれなかった

葵はびっしょりとした身体のままとぼとぼと歩いている

「葵大丈夫よ、正直に伝えましょう？」

葵は俯いたまま頷いた

(喜ばせる事ができない…)

そんな事がリピートされる

葵達はカワサキの店のドアをそっと開けた

店内は豪華でキラキラとしていた

国の大臣と婦人の結婚記念日だという事もあって村人達は盛り上がっていた

「…どうだった？」

期待を込めたのだろう

パーム大臣の目は葵達をじっと見ていた

葵達は正直に首を横に振った

パーム大臣はがっかりとした顔をしていた

(あぁ…私がもっとしっかりしていたら…)

そんな後悔が心に残っている

「え〜…このような日に当店を利用して頂き光栄です！では…大臣夫妻の結婚記念日を祝して…」

カワサキは持っていたワインを下さいのフタを開けた

「カワサキの店にしては、いいサービスね」

(この笑顔を汚したくない…)

葵の心はどんよりと暗くなっていた

「メーム！」

「なぁに？」

パーム大臣は悲しそうな声で言った

「結婚指輪なんだが…」

「結婚指輪？」

「すまない…」

「はぁ…」

葵達も同じく、ため息をつく

「何よ貴女達…」

「今年こそはと思ったんだが、色々あってな…」

葵達は何を言われても構わなかった

しかし、メーム婦人から意外な言葉が出た

「指輪なんていいのよ」

「…怒らないの？」

「覚悟してたの…そうやって気にかけてくれているだけで私は十分幸せよ」

「せっかくの記念日なんだから、楽しく頂きましょう？」

あぁ…なんて優しいんだろう

そう誰もが思った

すると、厨房からカワサキが魚を持ってきた

「たった今最高の食材が入ったよ！」

その魚をよく見ると、指輪を飲み込んだ鯉にそっくりだった

「あっ！」

葵が行動するよりも速く、カービィは鯉に飛びついた

そして、飛びついた衝撃で緑色に輝く指輪が出てきた

「おぉ…！」

パーム大臣は指輪を手に取り、メーム婦人の左薬指に通した

その時、店内では拍手喝采になった

「おぉ！最高だね！カービィもどんどん食べていいよ！」

「え…」

葵は悪い予感がした気がした

いや、悪い予感しかしない

カービィは店にある食べ物を吸い込み始めた

「わぁぁぁ！やめてやめて！ストップー！！」

葵の声は笑い声に掻き消されて村に響いた

「やめてってばあぁぁー！！」

5-1. リアル鬼ごっこ（n回）→←4-7. 水の魔法

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す