０８ カルチャーショック？ ページ10
＊
翌朝。
五人は教室でフェアリー・ゴッドマザーの道徳の授業を受けていた。教卓側から見て右手側からA、イヴィ、マル。通路を挟んでカルロス、ジェイの順に座っている。
校長の後ろの黒板には『口は噛みつくためではなく微笑むためにあり、分け与えることは思いやること』などの教訓が書かれている。ちなみにこの授業を受講する生徒は彼らだけである。
昨晩は杖の奪還に失敗し、何とか誰にも見つからずに逃げたものの、任務を果たせなかったために学校に通い続けなければいけなくなったのだ。
――退屈。
五人はまったく同じことを考えており、特にマルはこっそり杖の絵を落書きする始末だった。こっそり覗いたAは少しの間、彼女がペンを走らせるのを眺めていた。かなり上手い。
「それでは、もし泣いている赤ちゃんを手渡されたらどうしますか？」
フェアリー・ゴッドマザーが問題を出した。
Ａ．呪いをかける。
Ｂ．塔に閉じ込める。
Ｃ．ミルクをあげる。
Ｄ．心臓を抉り出す。
「いくつか質問いいですか？」
ここでAの手が上がり、四人は面白がるように彼女に目をやった。
「その赤ちゃんは味方側の子供ですか？ それとも敵側の子ですか？ それと、仮に味方側なら『平和な環境』と『戦争の真っ最中』のどちらの状況で泣いていますか？」
「敵、って……ああ、そうだったわね」
フェアリー・ゴッドマザーはAが生まれ育った環境を思い出したようだった。
「ここは『平和な環境』で考えたほうがいいわね。それからA、小さな赤ちゃんは誰のことも傷つけたりしないわ。どんな家庭で生まれても、彼らに罪はない。だから敵も味方も関係なく助けてあげるべきなのよ」
優しく諭す彼女に、マル、ジェイ、イヴィ、カルロスは顔を見合わせた。『自分たちを島に閉じ込めておいてどの口が言ってるんだ』と言いたげに。
一方でAは完全に言葉を失っていた。自分の教わったこととあまりにもかけ離れた答えに戸惑っているようだった。なにしろ、彼女の父シャン・ユーはたとえ女子供であっても容赦なく命を奪ってきたのだ。Aからすればフェアリー・ゴッドマザーの言葉は呑気とも取れるものだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 123人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
闍弥嵩 李(プロフ) - 夢さん» ありがとうございます！ 申し訳ないのですが、この作品で完結させたいと思っているので続編の予定は今のところありません……。 (12月8日 10時) (
レス) id: 6a8608f031 (このIDを非表示/違反報告)
夢 - こんばんは。ディセンダントがめっちゃ好きでその中でもこの作品が一番好きです！ディセンダント2とかって書けたりしますか？できればお願いします！ (12月7日 21時) (レス) @page30 id: b05a1258a4 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - ち の ち ゃ ん 。さん» ありがとうございます！めっちゃ嬉しいです！ (2022年9月25日 18時) (レス) id: d43cc1ea1d (このIDを非表示/違反報告)
ち の ち ゃ ん 。(プロフ) - うんわ好き。すきむりすき (2022年9月23日 10時) (レス) @page16 id: a284f3be6e (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - 百華夜さん» ありがとうございます！ クールな夢主さん書いてみたかったんです！ (2022年9月13日 20時) (レス) id: d43cc1ea1d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：闍弥嵩 李 | 作成日時：2022年8月17日 16時
