05 杖の持ち主 ページ7
「やあ、美人さん。俺の名はジェイ」
そう名乗ってから格好つけるように彼が腕を組むと、堪えきれずにAが笑い出した。目の前の女の子も愛想笑いを浮かべたが、どこか歓迎していない様子だった。
「オラドン高校へようこそ!」女性が二人の間に入ったことで、ちょっとしたナンパは終わった。
「私はフェアリー・ゴッドマザー。ここの校長です」
「あなたがフェアリー・ゴッドマザー?」
すかさずマルが反応する。
「私ずっと考えてたのシンデレラはさぞ驚いただろうなって。だってあなたがにっこり微笑んで、
ちょうどマルが『その杖』と強調した時、Aはさりげなく遠巻きに見ている生徒たちに目を向けた。かすかに聞こえてきた彼らの声と口の動きからかろうじて『戴冠式』という単語が読み取れた。
「魔法の杖って言うんだよね?」
「それは昔のこと。過去を振り返ってばかりでは未来を見失ってしまうわ!」
フェアリー・ゴッドマザーは微笑んでから、簡単な校則を説明した。図書館が開いているのは八時から十一時まで、夜間は外出禁止、と。
五人は顔を見合わせた。逆に言えば夜は誰も出歩かないから杖を盗むチャンスというわけだ。
音楽隊を引き連れてフェアリー・ゴッドマザーが去ると、「みんなにようやく会えて嬉しいよ」と制服姿のハンサムな男の子が前に出た。
「僕はベン」
「ベンジャミン王子よ。彼はもうすぐ王になるの!」
先程のピンクのワンピースの女の子が言うと、「愛しの王子様……」とイヴィが進み出る。
「女王の元に生まれた、王女でございます」
イヴィが優雅にお辞儀をしかけると、ワンピースの女の子が遮った。
「オラドンではイーヴィル・クイーンは王族じゃないの。あなたもね」
嫌味を含んだ言葉にイヴィの顔から笑みが消え、Aはオードリーをじっと見つめる。怒っているわけではなく観察しているだけのように思えたが、カルロスは気が気でなかった。
「こちらオードリー」
どうか暴れるのだけはやめてくれと祈っていたカルロスだったが、穏やかに紹介するベンの声にAの気が逸れたことでホッと一息ついた。
「そう、オードリー。王女よ。そして彼の恋人」
ワンピースの女の子、オードリーは誇らしげに言って「ね、そうでしょ?」と見せつけるようにベンの手を握った。
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闍弥嵩 李(プロフ) - 夢さん» ありがとうございます! 申し訳ないのですが、この作品で完結させたいと思っているので続編の予定は今のところありません……。 (12月8日 10時) (レス) id: 6a8608f031 (このIDを非表示/違反報告)
夢 - こんばんは。ディセンダントがめっちゃ好きでその中でもこの作品が一番好きです!ディセンダント2とかって書けたりしますか?できればお願いします! (12月7日 21時) (レス) @page30 id: b05a1258a4 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - ち の ち ゃ ん 。さん» ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです! (2022年9月25日 18時) (レス) id: d43cc1ea1d (このIDを非表示/違反報告)
ち の ち ゃ ん 。(プロフ) - うんわ好き。すきむりすき (2022年9月23日 10時) (レス) @page16 id: a284f3be6e (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - 百華夜さん» ありがとうございます! クールな夢主さん書いてみたかったんです! (2022年9月13日 20時) (レス) id: d43cc1ea1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:闍弥嵩 李 | 作成日時:2022年8月17日 16時