25 一件落着……と思った矢先 ページ27
マルは仲間たちに目を向け、まずはジェイに語りかける。
「物を盗んだって幸せにはなれない。トーニーのチームメイトたちと勝利のピザを食べるほうが幸せ」
「ああ」
次にカルロスを見る。
「デュードを撫でてると幸せでしょ。意外だけど」
そう笑ってからイヴィに目を向ける。
「イヴィ、男の子たちのためにバカなふりなんてしないで。本当は賢いんだから」
微笑んで頷くイヴィの目から涙がこぼれた。
「A、お父さんたちのように無理に非情になろうとしなくていい。本当は優しいこと、知ってるから」
とうとうAは片手で顔を覆う。ロニーは同じように目に涙を浮かべ、Aを抱きしめた。Aはそれを拒まずに弓から手を離し、空いた手でロニーを抱き返した。
「私は悪が支配する世界なんて望んでない。オラドン高校に通いたい。ベンと一緒にいたい。ベンといると、とても幸せだから」
マルが左手をあげる。その薬指にはベンから貰った指輪がはめてあった。
「物を壊すのもなし。私はいい人になる」
マルが拳を前に突き出し、「俺もだ」「私も」とジェイとイヴィが拳をマルの手に触れさせる。
「ひとつ、頼みたいことがある」
Aは涙を乱暴に拭って立ち上がり、ベンを見た。
「ロスト島にいる他の子供たちもここで暮らせるようにしてほしい。もうお腹を空かせてゴミを漁ることがないように」
島の住人やその子供たちはオラドン王国から貨物船で送られてくるゴミを漁って生きている。その事実はベンも他の生徒たちも知らなかったようだった。彼らが驚く一方でビーストが表情を引き攣らせたのをAは見逃さなかった。
「勿論だ。約束するよ」
ベンが力強く宣言するとAはようやく微笑み、拳を突き出した。
と、ここでカルロスが
「あのさ、確認だけど……親に怒られるのは覚悟の上なんだよな? めちゃめちゃ怒るよ」
これには皆、笑った。
「大丈夫。ここには来られないよ」とベンが言う。
「じゃあ俺も……いい人になる」
カルロスが笑顔で拳を突き出した。
そしてマルに手招かれ、最後にベンの拳が加わると周りからは拍手が起こった。フェアリー・ゴッドマザーやベル、ビーストも優しく笑みを浮かべている。
その時、窓のひとつが割れた。渦を描くように緑色の煙が舞い込み、マルたちの前に降りる。
煙が晴れ、姿を現したのは――マレフィセントだった。
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闍弥嵩 李(プロフ) - 夢さん» ありがとうございます! 申し訳ないのですが、この作品で完結させたいと思っているので続編の予定は今のところありません……。 (12月8日 10時) (レス) id: 6a8608f031 (このIDを非表示/違反報告)
夢 - こんばんは。ディセンダントがめっちゃ好きでその中でもこの作品が一番好きです!ディセンダント2とかって書けたりしますか?できればお願いします! (12月7日 21時) (レス) @page30 id: b05a1258a4 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - ち の ち ゃ ん 。さん» ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです! (2022年9月25日 18時) (レス) id: d43cc1ea1d (このIDを非表示/違反報告)
ち の ち ゃ ん 。(プロフ) - うんわ好き。すきむりすき (2022年9月23日 10時) (レス) @page16 id: a284f3be6e (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - 百華夜さん» ありがとうございます! クールな夢主さん書いてみたかったんです! (2022年9月13日 20時) (レス) id: d43cc1ea1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:闍弥嵩 李 | 作成日時:2022年8月17日 16時