13 クッキー ページ15
「えっと、あのね! ジェーンの髪型、すっごく素敵。私たちのことは嫌いだろうけど……でも、私の髪も変えてくれない?」
気を取り直したようにロニーが切り出し、「なんで私が?」とマルが冷たく笑う。
「かっこよくなりたいの。マルみたいに!」
マルはため息をつくと呪文の書を開いた。「ビックリ、ドッキリ。髪型よ変われ、かっこよく」と唱えて指を振ると、ロニーの短い髪が柔らかな茶色のロングヘアに変わった。
「いいね。綺麗」
まさかAが褒めるとは思わなかったためロニーは驚き、姿見で自分の姿をチェックした。するとすぐに「すごく気に入った」と目を輝かせる。
「後は……」
ロニーは思い切りスカートを破った。一本の切れ目が入っただけでクールになる。
「最高だよ」
マルが笑顔を向けると、ジェーンもロニーの真似をした。しかしすぐに我に返る。
「私、なんてこと……ママに怒られちゃう!」
「まあ、引っ掛けて裂けたことにすればいいんじゃない? でも、正直言ってかっこいいよ」
Aが褒めると「このままでいいかな」とジェーンは照れた。
*
その夜、五人は学校の調理室でクッキー作りに集中していた。材料にはマルの恋の呪文がかかっている。
戴冠式でより杖に近い席に座るにはベンの恋人になる必要があった。そのため、特別な魔法をかけたお菓子を彼に食べさせて心を射止めるというのが狙いだった。
「クルミ入れていい? ベンの好物だから」
「A、それどうやって知ったの……?」イヴィが驚く。
「あとは一粒の涙が必要、って書いてあるけど泣いたことなんてないよ」
マルが困ったように言うと「玉ねぎを切ろう」とカルロスが提案する。
「だめ。悲しみからくる涙じゃないと」
「涙は涙だろ」とジェイ。
「違うの。どんな涙でも抗体と酵素が含まれてるけど、感情的な涙には生理的なものよりもタンパク質からなるホルモンがちょっと多いの」
イヴィがスラスラと説明すると「物知りじゃん」とマルが笑う。母親のイーヴィル・クイーンが薬作りが得意だということもあり、彼女自身も理系が得意分野だった。
と、そこに調理場のドアが開いてロニーが現れる。
「マル、ここにいたのね! みんなあなたに髪型を変えてほしいって! ……あれ? これは?」
「何でもない。ただのクッキー」
マルが答えるとロニーはなんと、生地を指ですくって食べてしまった。恋の呪文がかかったものを。
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闍弥嵩 李(プロフ) - 夢さん» ありがとうございます! 申し訳ないのですが、この作品で完結させたいと思っているので続編の予定は今のところありません……。 (12月8日 10時) (レス) id: 6a8608f031 (このIDを非表示/違反報告)
夢 - こんばんは。ディセンダントがめっちゃ好きでその中でもこの作品が一番好きです!ディセンダント2とかって書けたりしますか?できればお願いします! (12月7日 21時) (レス) @page30 id: b05a1258a4 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - ち の ち ゃ ん 。さん» ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです! (2022年9月25日 18時) (レス) id: d43cc1ea1d (このIDを非表示/違反報告)
ち の ち ゃ ん 。(プロフ) - うんわ好き。すきむりすき (2022年9月23日 10時) (レス) @page16 id: a284f3be6e (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - 百華夜さん» ありがとうございます! クールな夢主さん書いてみたかったんです! (2022年9月13日 20時) (レス) id: d43cc1ea1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:闍弥嵩 李 | 作成日時:2022年8月17日 16時