12 ムーランの娘 ページ14
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この日、部屋にはジェーンが来ていた。マルはベッドに寝そべって絵を描き、イヴィは裁縫、Aは教科書を開いている。
「『心の美しさに気づいてくれない男の子なんて、付き合わなくていい』ってママは言うの」
ベッドの支柱を握りながらジェーンが愚痴を言う。母親のフェアリー・ゴッドマザーに『魔法で自分を綺麗にしてほしい』と頼んだようだが、結果は上記の通りである。
「信じられる? どんなおとぎの国に住んでるつもりなの」
「オラドンでしょ」
もっともなマルの返しにAも笑った。とはいえ、ジェーンはそのままでも十分綺麗だと彼女は思っていた。
「これじゃ彼氏なんて一生できない」
「いらないでしょ、彼氏なんか」とマル。
「いたことないのにどうして言えるの?」
イヴィが返すと「私には必要ないから。時間の無駄」とマルが言う。するとここでイヴィが、
「チャドの宿題やるの忘れてた!」
と大慌てでチャドのリュックを掴む。聞けばシンデレラの息子で、新しくできた彼氏らしい。競技場で一度姿は見ていたが、恋人に自分の宿題を押しつけるとは。
「貸してイヴィ」
代わりにやる、とAが手を差し出すと「でも……」とイヴィは迷う。
「大丈夫、あんたがやったってことにするから。筆跡変えるくらい簡単だよ」
「ありがとう。じゃあ……」
Aはイヴィからバインダーを受け取ると、素早くペンを走らせた。そんな彼女をマルは意外そうに見つめる。意外と世話焼きなのだろうか。
しばらくして「終わったよ」とAがバインダーを返した直後、ドアがノックされて女の子が部屋に入ってきた。前髪を眉上あたりで切った黒髪のショートボブ、花柄のピンクの中華風シャツに濃いピンクの帯を締め、淡いブルーグリーンのミニスカートをはいている。
「ハーイみんな、私はロニー!」
親しげに挨拶してから彼女は付け加えた。「ムーランの娘、よ……?」
マルは呆れたような表情を浮かべ、イヴィは引き続き裁縫に取り掛かっている。そんな二人だったが、ふと同時にAを見た。Aは無表情でロニーを見つめていたが、やがて座り直すと椅子の背に肘を乗せ、もう片方の手をヒラヒラと振りながら自己紹介をした。
「ハーイロニー、私はA。シャン・ユーの娘」
「あ、その……よろしくね……?」
ロニーは言葉を詰まらせた。これにはマルも思わず笑ってしまった。
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闍弥嵩 李(プロフ) - 夢さん» ありがとうございます! 申し訳ないのですが、この作品で完結させたいと思っているので続編の予定は今のところありません……。 (12月8日 10時) (レス) id: 6a8608f031 (このIDを非表示/違反報告)
夢 - こんばんは。ディセンダントがめっちゃ好きでその中でもこの作品が一番好きです!ディセンダント2とかって書けたりしますか?できればお願いします! (12月7日 21時) (レス) @page30 id: b05a1258a4 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - ち の ち ゃ ん 。さん» ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです! (2022年9月25日 18時) (レス) id: d43cc1ea1d (このIDを非表示/違反報告)
ち の ち ゃ ん 。(プロフ) - うんわ好き。すきむりすき (2022年9月23日 10時) (レス) @page16 id: a284f3be6e (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - 百華夜さん» ありがとうございます! クールな夢主さん書いてみたかったんです! (2022年9月13日 20時) (レス) id: d43cc1ea1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:闍弥嵩 李 | 作成日時:2022年8月17日 16時