10 擬態 ページ12
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ジェイとカルロスは競技場の芝生の上に立っていた。ベンチには好奇心でついてきたAの姿もある。
トーニーは木製のスティックと硬質の球を使う競技で、センターラインには二台の大砲が設置されており、キルゾーンと呼ばれる中央地帯にボールを発射し続けている。敵選手だけでなく複数のボールを避けながら、球を相手のゴールに打つというのが大まかなルールだった。
「ジェイとベンたちはオフェンスだ。チャドはディフェンス!」
コーチの指示にハンサムな少年チャドがフィールドをゆっくり歩いてくる。顔は良いが、どこかお高くとまっているような偉そうな雰囲気だった。
試合開始のホイッスルが鳴るや否や、ジェイは目の前の敵選手に思い切りタックルを食らわせた。弾丸のように駆け抜け、大砲から次々と飛んでくるボールを軽やかにかわす。しまいに見境がなくなり、ちょうど前に走ってきた味方選手にまで体当たりしたが、最終的に彼は見事に球をゴールに打ち込んだ。
チアリーダーたちは歓声を上げて飛び跳ねる中、オードリーだけは腰に手を当てて眉を顰めていた。
「おいお前! こっちに来い!」
コーチに呼ばれ、ジェイは駆け寄った。てっきり怒られるのかと思いきや、コーチは「とんでもない才能じゃないか!」と褒め、彼をチームに入れた。そしてベンが教えるということで、カルロスも一緒に入ることになった。
トーニーの練習試合が終わった数分後、Aはジェーンと二人で屋外を歩いていた。いつのまにか仲良くなったようだ。
不揃いなボブだったジェーンの髪は美しくウェーブするロングヘアに変わっている。話を聞くと、マルが魔法で髪型を変えてくれたのだという。
「ママにお願いしたら顔も美しくしてくれるかな」
「してくれるといいね」
そう答えるAの声はロスト島にいた時と比べると小さく控えめで、優しいものだった。歩くペースもジェーンに合わせて遅くしている。
ロッカーの並ぶ場所に差しかかると近くのピクニックテーブルで談笑していた女子生徒たちがAに目を向けた。
「ねえ、Aじゃない?」
「え? どこ!?」
「A!」
声をかけられたAが軽く手を振ると、女子たちは可愛らしく歓声を上げた。まるでハンサムな男性を前にしたような反応だ。
「同姓にも人気なのね」
「『にも』?」
「男の子たちがあなたの話をしてたわ。『ポニーテールの綺麗な女の子がいる』って」
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闍弥嵩 李(プロフ) - 夢さん» ありがとうございます! 申し訳ないのですが、この作品で完結させたいと思っているので続編の予定は今のところありません……。 (12月8日 10時) (レス) id: 6a8608f031 (このIDを非表示/違反報告)
夢 - こんばんは。ディセンダントがめっちゃ好きでその中でもこの作品が一番好きです!ディセンダント2とかって書けたりしますか?できればお願いします! (12月7日 21時) (レス) @page30 id: b05a1258a4 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - ち の ち ゃ ん 。さん» ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです! (2022年9月25日 18時) (レス) id: d43cc1ea1d (このIDを非表示/違反報告)
ち の ち ゃ ん 。(プロフ) - うんわ好き。すきむりすき (2022年9月23日 10時) (レス) @page16 id: a284f3be6e (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - 百華夜さん» ありがとうございます! クールな夢主さん書いてみたかったんです! (2022年9月13日 20時) (レス) id: d43cc1ea1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:闍弥嵩 李 | 作成日時:2022年8月17日 16時