劇的逃走劇04 ページ12
勝己が救助に応じたその瞬間、Aも全速力で駆け出した。敵が何か叫んでいるが振り返らない。出久たちが飛び出してきたその場所に向かい、脇目もふらず走り抜ける。
「………！」
そしてそこに、彼はいた。
「焦凍……！」
勢いのまま、両手を伸ばし飛びついた。会いたかった。触れたかった。その思いのままに、思い切り抱きつく。
「A！ お前、その格好……！」
「大丈夫っ……何もされてない。大丈夫……！」
きつくきつく、抱きしめられる感覚。その体温に、涙が溢れそうになる。
「Aさんこちらを」
『創造』で作ったのだろう。百が上着を着せてくれた。
「ヤオモモちゃん……！」
「見つからない内に、早く逃げましょう！」
「うんっ……うん！」
彼女も無事だった。焦凍と会えたこととその事実に、胸がいっぱいになる。そして駆け出す。離れないように、焦凍の手を強く強く握りしめながら。
(帰れた……！ 帰れたんだ……！)
彼の元に。
涙を拭いながら、瓦礫の道を駆け抜けた。
「ここまで来れば安心ですわ……！」
敵たちと戦った場所を背にするように走り、プロヒーローが避難誘導をしている場所まで逃げ切れた。敵たちが追ってくる気配はない。
「緑谷の方も全員無事だ」
出久との連絡を終えた焦凍の言葉に、本当に脱出できたのだと実感する。その途端に、嗚咽が喉をせりあがってきた。
「っ……ぅっ……」
「A……」
「Aさん……」
「ひっ、うっ……」
「…………怖かったな」
焦凍に抱きしめられ、頭を撫でられる。もう限界だった。
「〜〜〜〜〜〜！！」
堰を切ったように涙がぼろぼろこぼれ出す。泣くつもりなんてなかったのに、勝手に涙が出てきて止まらなかった。
「守ってやれなくて、すまねえ」
「っ……！」
ぶんぶんとAは首を振る。救けにきてくれた。それで十分すぎたし、何より、謝りたいのはこっちだった。
「私のせいですわ！ 私が、もっと強ければ……！」
百も、泣きながら謝ってくる。Aはただただ、頭を振り続けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 524人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
SangriA(プロフ) - yu-kariさん» コメありがとうございます！嬉しいです(>ω<)これからもよろしくお願いします！ (2018年10月7日 19時) (
レス) id: f00caaebcb (このIDを非表示/違反報告)
yu-kari - とても面白いです！続き待っときます！ (2018年10月7日 15時) (レス) id: de93f0d8c4 (このIDを非表示/違反報告)
SangriA(プロフ) - 胡桃 りんごさん» コメありがとうございます！こちらこそ、読んでくれてありがとうございます。これからも更新していくのでよろしくお願いします！ (2018年10月6日 23時) (レス) id: f00caaebcb (このIDを非表示/違反報告)
胡桃 りんご(プロフ) - 続編おめでとうございます いつも更新ありがとうございます (2018年10月6日 23時) (レス) id: c748bcabcd (このIDを非表示/違反報告)
SangriA(プロフ) - mayumiさん» 展開についてはネタバレになるのでお話できません。ご了承ください。 (2018年10月6日 22時) (レス) id: f00caaebcb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：SangriA | 作成日時：2018年10月6日 21時
