幕間 〜木枯らしと体温〜 ページ22
「くしゅっ」
小さなくしゃみに隣を見れば、Aが寒そうに身を縮こまらせていた。
「大丈夫か」
「うん。少し寒いだけ…もう冬物解禁かなあ」
Aの言う通り、最近ぐっと冷え込んでいる。木に揺れる葉はすっかりと緑色の面影をなくし、黄色や赤に染まっていた。風は冷たく、首もとや手先をひやりと撫でていく。
「A」
彼女の両手を包み込む。すっぽりおさまるそれに、焦凍はゆるりと笑った。そして、Aもまた。
「…あったかい」
左の個性を使っているのだろう。少し高めの体温にAは嬉しそうに笑う。その笑顔に、ほわりと胸に明かりが灯るような気持ちになる。
(左で誰かを笑顔にできるなんてな)
仮免補講のときもちらと思った事だが、Aの笑顔を見て改めてそう思う。
「焦凍、どうかした？」
慈しむように頭を撫でてくる焦凍に、Aは首を傾げる。
「…こんな風にも使えるなら、左も悪くねェって思った」
イナサとのいざこざのときのように、もしかしたらまだ心のどこかで、この個性が、エンデヴァーのことが、引っかかっているのかもしれない。けれど少なくとも今、目の前にいる少女が笑ってくれるなら。
「……
「…！ そっかぁ…！」
Aは嬉しそうにそう言って、そして焦凍の左手を愛しげに包み込んだ。
「なんか、嬉しいな」
「嬉しい…？」
「うん。焦凍が自分を認めてくれてるみたいで、すごく嬉しい」
そのときの彼女の笑顔の鮮やかさは、木枯らしが吹く季節というのに、まるで花でも咲いたようだった。
「わたしが大好きな焦凍を、焦凍も好きでいてくれるのはすごく嬉しいよ」
「…！」
思わぬところで愛情を言葉にされて、どきりと心臓が跳ねる。
「焦凍」
「な、んだ」
少し声が上ずった。ダセェ、と自分を情けなく思ったが、Aは笑顔のまま。
「焦凍のこと、全部好きだよ」
なんて、言うものだから。
(やべ…)
愛しい気持ちが溢れそうになる。
「はあ…」
「えっ、焦凍っ？」
何かしないと本当に溢れそうでたまらなくて、焦凍はAを抱きよせて、その肩に額をくっつけた。Aも驚いたようだったが、甘えるようにぐりぐりと額を擦り付ける仕草に微笑み、優しく頭を撫でてくる。
「…なあA、寮戻ったら」
「ん、こっち来る？」
「……頼む」
格好悪い話だが、思い切り甘えたい。
早く戻ろうと繋いだ手から伝わる体温が、どんなものより暖かかった。
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SangriA(プロフ) - 轟沙季さん» コメントありがとうございます！すごく嬉しいです(>ω<)更新がんばりますのでこれからもよろしくお願いします！ (2019年3月25日 23時) (
レス) id: f00caaebcb (このIDを非表示/違反報告)
轟沙季 - この作品は素晴らしいです！続きも読みたいです！図々しいですが更新よろしくお願いします！ (2019年3月25日 13時) (レス) id: 558a8f9c64 (このIDを非表示/違反報告)
SangriA(プロフ) - アトさん» コメありがとうございます！いつの間にかこんなに長く…でも楽しみにしてもらえてるのすごく嬉しいです。これからもがんばります！ (2019年2月25日 21時) (レス) id: f00caaebcb (このIDを非表示/違反報告)
SangriA(プロフ) - りんさん» コメありがとうございます！いつも読んでもらえて嬉しいです。これからもよろしくお願いします！ (2019年2月25日 21時) (レス) id: f00caaebcb (このIDを非表示/違反報告)
アト(プロフ) - こんなに続いてる神作初めて見ました…！！フェアリーテール楽しみにしてます！！！！ (2019年2月24日 23時) (レス) id: 405929ea37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：SangriA | 作成日時：2019年1月26日 20時
