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-YD-
ヌナは、昔こそ良く苛立ちを見せていた
まだ言語の壁がある中、彼女に合わせることなく進むレッスンに、ヌナの余裕は着実にすり減っていて、きっと限界だったんだろう
それを救ったのは、日本語を流暢に話す偉大な先輩方だった
日本支社があるのに、本社にやってきた日本人
そんな話題を耳にしたのか、良く彼女と言葉を交わし、触れ合い、気付けばヌナは笑顔の方が多くなっていた
そんな彼女が随分と久しぶりに、苛立った姿を見せたのだから、相当腹立たしいものだったんだろう
それは、まだ付き合いが長いとは言えない後輩達の前で、大声を上げてしまう程に
良かったと思う
俺の些細な弱すぎる程の力で、練習室から連れ出せる位には、信頼関係を築くことが出来ていて
YD「言い過ぎましたね」
「…分かってるよ、ジフニの気持ちも、あれが言っちゃいけないことだってことも
馬鹿だね、私、分かってる癖にさ」
階段に座り込んで顔を覆うヌナからは、頭が冷えたのか自責の念が感じられる
ジフニヒョンがAヌナに向けるのは、友情や愛情なんかでは片付けられない、一種の独占欲を感じさせる
ただそれを全面に押し出す訳ではなく、ひたすらに見守る形で伝えてくる、何とも分かりづらい方法で、だけれど
恐らく、連絡について何か言われたんだろう
おおよそ検討は付くし、もしその予想が合っているなら、ヒョンを責める理由はない
だからと言ってヌナの気持ちが分からなくもない
「イェダミ、ごめんね
戻っていいよ、私は、もうちょっとだけ、休むからさ」
YD「…じゃあ、戻るけど
ヒョンはね、本当にヌナが大事なんだよ
じゃないと、あんな風にやらないよ、弟の前で、さ」
そう言って部屋に戻れば、何とも言えない雰囲気がまだ尾を引いていたらしい
みんなヌナの様子が気になるんだろうに、口に出すのは憚られるのか、視線をやる割りには何も言って来なかった
YD「…さっきまで、階段にいましたよ
まぁ、今はどうか分かんないけど…
ヒョンなら、分かるでしょ」
JH「…うん、ありがと
ちょっと行ってくるわ」
勢い良く部屋を出ていったジフニヒョン
早く、仲直りして下さいね
2人がそうやって喧嘩するのは初めてじゃないけど、気持ちのすれ違いは、きっと思うより苦しいから
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作者名:そると。 | 作成日時:2023年10月12日 22時