たからもの -TREASURE- (ページ25)

今日:116 hit、昨日:64 hit、合計:108,390 hit

ゆっくりでいいんだよページ25

男同士ならまだ分かるけど、唯一の姉に向かって、日本人がお前って言うのどうなの？
なんて文字を見たことがある
それはきっとSNSを良く見るハルトなら尚更知ってると思う

HR「ごめんヌナ」

「何が？w」

そう誤魔化しても、とぼけても
全部分かってる癖に、なんて目で私を見るから、ついつい視線を逸らしたくなる

気にしてないと伝えれば、明確に話題を出すことになる
だからといって、彼の謝罪への返事を、いつまでも曖昧なままではいられないことは分かってる

ハルトは私より、いくつも年下で
私より、まだこの世界のことを深く深く知らない

『気にしたらあかんよ』

HR『でも、流石にさ』

『いつ私が嫌って言うた？』

HR『言ってない、なぁ』

『な？ならええんよ
まぁみんなに良い目で見られることが1番ええよな、アイドルやし
でもな、全部が全部、みんなの望むようには無理やで』

HR『…むずい』

『あらぁ、むずいか
ん～…じゃあ例えば
黒髪の私がいいって言う人が9割、金髪の私がいい人が1割
みんなの希望通りにいく？』

HR『無理、やな』

『やろ？
なら、どっちでもない私の意見で茶髪にしよ、とかさ、いっそのことピンクにしよ、とか
結局は私が決めること、100%ファンのみんなの意見聞くのは無理やしな』

何の前触れもなく家にやってきたハルトは、ソファに落ち着くこともなく
ずっと私の前に立って、その整った顔を床に向けていた

分かっているけど納得出来ないのか
まだ伝わってないのか

沢山の先輩を見てきた、沢山話を聞いてきた
いくらアイドルでも、十人十色の意見にいちいち流されちゃいけないんだと、やんわりと聞かされ、背中が伝えられてきた

後輩や年下には教えてあげるべきだとも、指導されてきた

今がきっと、そのタイミング

仕事がなく、フラりと揺れるだけの手を引いて、膝を折らせれば、ずっと曖昧だった視線がかち合う
ようやく見れた彼の目は、何とも言えない感情を含んでいるようで、それはきっと初々しさから来るものだ、とも思った

「なんでハルトは私のことああやって呼ぶの？」

HR「……分かんない、癖ですきっと」

「ん～分かんないかw
でもさ、それ仲良いって思ってないと呼べなくない？」

HR「まあそれは…」

「ならヌナは嬉しいかなぁ
日本人同士だし、分かってるもん」

今はまだ、納得出来ないかもしれない
素直に飲み込めないかもしれない

けどこれから歩んでいく未来の中で、ゆっくり学んでくれたらいい
私が教わったように、時間がかかってもいい

また小さくごめんと溢したハルトの頭を、柔く撫でれば
その手が、きゅうっと握られた