亜麻の恩返し(1) ページ2
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『今日の夜、買い物行ってくるね』
リビングで2人が休んでいる際に、そう口を開いたのはAだった。
「え、何買うん?何時?ついてくよ」
『待って、湊くん心配しすぎ(笑)』
不破の心配性は重症だ。しかし、今に始まったことじゃない。
昔から近所のコンビニに行くだけだと言っても、
「外暗い、危なすぎる」
毎日駅近くの仕事場にまで送ってくれる。何度か断っても、
「え?こんな可愛い子1人で行かしたら絶対攫われるやん、無理」
最終的には、「俺が一緒にいたいんや!」なんてセリフも出たことがある。
『逆に私が買いに行くの湊くんが案件配信始める18時だけど来てくれるの?』
「うわ!絶対またわざとやん!俺が行けないの知っててその時間にしたやろ(笑)」
Aはこの戦法を覚えてから、不破に勝てることが多くなった。
それに伴って、不破は一緒にいられる時間、守れる距離にいられる時間が少なくなったという理由から、少しずつ不安が溜まってきている。・・・
そんなこんなで不破が配信を始める時間になった。
『行ってきます、ってそんな顔しないで?(笑)すぐ帰ってくるから』
「いやだってさぁ、うーん。気をつけてねホント。やっぱ送っていこうか?」
『明那さん待たせてるでしょ(笑)じゃあ湊くん、ん」
Aは踵を浮かせて、背を伸ばし、不破の顔に自分の顔を近づける。
不破はそれに応えるように、Aを抱き寄せ、優しく口付けをする。
「あー、もうホント気をつけてね、なんかあったら連絡ちょうだい?」
『うん、行ってきます(笑)』
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作者名:せりな | 作成日時:2024年2月3日 20時