１：ゆっくりでいいんです。 ページ1
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ゆっくりと歩く、独りの少女。
その少女は常に俯いており、顔は見えない。
その少女の名は、瑠璃と云った。
明るい喧騒に似合わぬ真っ黒な服装。
少し帽子に埋もれている髪の色は、綺麗な亜麻色。
防弾のサングラスで隠された瞳は、色素の薄い蒼色と銀色のオッドアイ。
彼女は「アルビノ」且つ「オッドアイ」の、非常に稀な遺伝子を持つ人間だった。
崩れてしまったクラウンハーフアップを気にする素振りも特に見せない。
寧ろ、やや荒い息と動かし辛そうな足を気にしていそうだ。
その少女はまっすぐに進んだ後、ふと足を止めた。
「ポアロ」そんな名が付いているカフェの手前だった。
そっと、大切な割れ物を運ぶように、優しくドアを開けて。
目立たないように、カウンターの端に座った。
「…………」
不安に耐え切れなくなったのか、少女はなるべく人の視線にあたらないように、肩にかけているショルダーバッグから「パロキセチン」と書かれた薬をそっと取り出した。
注文を取りに来たであろう男性店員が、憐れむような視線を少女に向けながら薬を飲むのに十分な量の水が入ったコップを差し出す。
「―！」
少女の脳内には、ただただ恐怖が満ちていた。
男性の事。視線の事。人と対する事。
何もかもが怖くなって、軽く過呼吸に陥りかける。
無理矢理薬を口に含み、ぐいっと水を飲み干す。
いつの間にか、少女の眼前から店員は消えていた。
代わりに、一枚のメモが置いてあった。
懐からペンを一本取り出して、震える手で「ホットココア」と拙い字で記入してみる。
それを誰もいない隣席の使う分のテーブルに置いた。
二分もすれば、ココアは湯気を立ててメモがあったところへ置いてあった。
「(……男の人、みんな同じじゃなかった…)」
少女にとっては、初めての経験だった。
ホットココアを一口、火傷しない程度に口に含む。
「(……あたたかい)」
それは、単なるココアの熱さだけではない。
人のあたたかさ。
それが、彼女の心をもあたためた。
✎︎＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
・男性恐怖症…男性と接したり、話したり、触れたりすることに恐怖を抱く。
・視線恐怖症…他人が自分に注目して、自分が観察されているような気がし、他人の視線に恐怖を抱く。
・対人恐怖症…他人との交流や評価に対して恐怖を抱く。
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diamond(プロフ) - わ、私の作品にこんなにコメントをくれた人は初めてです……！！本当に嬉しいです、それぞれの作品をとても評価して下さっているし…！！すっっごくいい人だ……！！！ (2月18日 14時) (
レス) id: ed33001028 (このIDを非表示/違反報告)
あお - 題名見ただけで分かる、この作品は神作だと。そしてこの作品を作っている作者もまた、神作者だということを。 (2月18日 13時) (レス) @page1 id: 4f6d70bcc4 (このIDを非表示/違反報告)
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