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transition. 5 ページ20

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真昼なのにも関わらず、薄暗く怪しい雰囲気を醸し出している路地裏を抜けたら、まるで普通の民家と間違えそうな家の門を跨ぐ。

そして少し古びた木製の扉を開けた。そこには外見からは想像できないほどの清潔感と、無駄に広い室内。

これも吸血鬼の固有能力だろうか。

近くの階段から上へ登って、すぐに診察室へ直行する。
何度も行き来すると最初迷ったのが不思議なほど、行きやすい場所にある。

扉を開けると、白衣を着た男。(ヒツジ)さんが出迎えてくれた。
普通なら山羊(ヤギ)さんも助手として出てくるはずだが、僕を怖がって奥の部屋に閉じこもっているんだろう。

ちらりと横に目をやると、本棚には医学書らしきものが並んでいる。
しかし、その隣にあるパソコンラックやデスクの上に置かれた書類などは乱雑に置かれていて、彼の性格が出ている。


「……眼を見る限り、(シキ)とお楽しみだったようだな」


前回会った時よりも色鮮やかに光る瞳を見てか、悪戯に笑う。

……この人、そういう言い方をされると僕が赤くなるのをわかって楽しもうとしているのか。
僕は呆れながらも(ヒツジ)さんの手前に置いてある椅子に座って反論した。


「誰かさんに血を抜かれたり唾液を取られたりで、気絶寸前だったので。ちょっと貰っただけです」


彼は僕の言い訳を聞いてニヤリと笑いながら、注射器を手に取る。

うっ、今日もまたか。なんて思って目を瞑るが、予想していた痛みはない。

恐る恐る目を開くと注射器の中には既に血液が入っていた。
驚いている僕を見て、彼は得意げに言う。


「今日は結果が出たから、見てもらうだけだ」


何処からか取り出したナイフを徐に自身の腕に突き刺し、赤い雫が滴る。
その瞬間、僕は反射的に顔を背けた。

数秒後、落ち着いた頃に再び視線を向けると、そこには傷一つない綺麗な肌と、空っぽになった注射器があった。

その光景を見た僕は反射的に驚きの声を上げるが、横で黙っていたはずの一護(イチゴ)の声でかき消された。


「この血はまさか、Aの血か?」

「そのまさかだ。まだ管理人には伝えてないが伝えたらどうなるか」


そう言って愉快そうに笑みを浮かべる彼だが、それは悪巧みをしているようにしか見えない。




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夕夜 - とっても面白いです!続き待ってますね。応援しています!! (2023年5月7日 22時) (レス) @page43 id: 19daafe7ae (このIDを非表示/違反報告)
地銀(プロフ) - kemさん» ありがとうございます!CSSは自作です( ; ; ) (2022年7月31日 4時) (レス) id: ace2098bf5 (このIDを非表示/違反報告)
kem - めっちゃ面白いです!!!!CSSってどこのつかってますか?? (2022年7月31日 1時) (レス) @page19 id: c443e77f26 (このIDを非表示/違反報告)
地銀(プロフ) - あーちゃん様さん» 有難うございます!頑張ります( ; ; ) (2022年7月29日 1時) (レス) id: ace2098bf5 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん様 - 更新待ってます‼めちゃめちゃ面白いです‼ (2022年7月28日 19時) (レス) @page7 id: 875565d54e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:地銀 | 作成日時:2022年7月28日 7時

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