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嬉し涙なんて本当に出るんだ、と自分で制御できない涙を溢しながら思う。そんな俺とは対照的に、Aはその様子を穏やかな微笑みで見つめていた。
その笑みはまるで愛しい家族を見つめる母親のようで、出産という困難を乗り越えるだけで人はこんなにも心に余裕が出来るのだと、どこか感心してしまう。俺なんて、抱いただけでこんなに泣いてんのに。
「ねぇ、名前、なににするの」
やっと涙が引いてきた頃、ゆらゆらとまだ名も無き赤ん坊ごと左右に揺れながら、ポツリとそう溢す。すると彼女は待っていました、と言わんばかりにドヤ顔を披露した。
今俺が抱いているこの子は、どうやら男の子らしい。男の子の名前となると、つい自分の同性ということで力が入ってしまい、俺は全然一つに絞れなかったのだが。彼女はもう一つに絞れている様子だった。女の子の名前はすぐに決められたんだけどな。
今考えてるのはね、と彼女が前置きをする。それすらもなんだか焦らされている気分になって、先走る感情を抑え込みながら耳を傾けた。
「―――
アサヒ。漢字変換が間に合っていない俺に、彼女は丁寧に漢字も説明してくれる。朝顔の朝に、太陽の陽。明るい子になってほしいから、とAが浮かべた笑みは、どことなくこの子に似ている気がした。
「どうですか？」
「……うん。朝陽、俺も良いと思う」
朝陽ー、と腕の中で眠っている赤ん坊に話し掛ければ、少し身動ぎをし始める。そんな訳がないのにまるで返事をしてくれたみたいで、Aにもその事を伝えれば、「そんなわけないでしょっ」とツッコミを入れられてしまった。
朝陽、朝陽か。脳内で反芻する度に、俺の中でしっくり来る名前。あぁそうだ。この子は、朝陽は絶対に……俺の子だ。
「A」
「なんですか、拳さん」
俺はこの日、改めて決意した。
この小さな命も、目の前で微笑む彼女の事も、俺が絶対に守り抜く。たとえ、何に変えてでも。
「これからも、二人で一緒に頑張ろう」
「……当たり前ですよ。パパになったからには野菜も全部食べさせますからね？」
「え、やだ」
「駄目です、食べなさい」
すやすやの眠る我が子。響き渡る二人分の笑い声。朝の七時を指す時計。
―――カーテンの隙間から、眩しいくらいの朝日が、病室に差し込んでいた。
．
．
―――二人ならきっと、どこへだって恐れずに進んでいけるよ。
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eze(プロフ) - 完結おめでとうございます！夫シリーズ大好きで更新されていることに驚いてやってきましたが、最後の最後まで面白く読ませていただきました。今後も楽しみにしております。 (2020年12月21日 22時) (
レス) id: 823d0abd48 (このIDを非表示/違反報告)
わか(プロフ) - 完結おめでとうございます！白菜さんの作品の中でもこの作品はめちゃくちゃ好みでした！！最後のブーケトスのオチまで完璧でしたね笑 思わず笑ってしまいました笑 これからも応援してます！！ (2020年12月21日 19時) (レス) id: ecdf86f4c4 (このIDを非表示/違反報告)
ピーチフラペチーノ - 終わってしまったぁぁぁぁぁ！！！ぴえん。 (2020年12月21日 15時) (レス) id: cb74bd79ea (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 完結おめでとうございます。とても面白かったです。最後にko-chanが幸せになったのは「よかったなぁko-han！！」と少し興奮しました。私の最押しも出てきてくれましたし……めっちゃ良かったです！ところで、小森ちゃんって他の話に出たことありますか？ (2020年12月21日 5時) (レス) id: 60ae3ef212 (このIDを非表示/違反報告)
ソル(プロフ) - 更新欄にあって発狂しました。大好きです。お話 (2020年12月20日 21時) (レス) id: 744fb08bfc (このIDを非表示/違反報告)
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