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突然のことに目を開けている俺とは違って、眼鏡をしていてもぼやける程近くにある彼女の顔は、きゅっと恥ずかしそうに目を瞑っていて。つい温もりが離れていくのが名残惜しくなってしまう。
「―――お誕生日、おめでとうございます。どうか来年も、再来年も、ずっと私に祝わせてくださいね」
顔が離れると、彼女は真っ赤な顔をまま、そう言ってにへっといつもの笑顔を浮かべた。
「……うわー、恥ずかしー！料理だけじゃ駄目かなぁと思ってたまには素直になってみようと思ったんですけど、やっぱり慣れないことはするもんじゃない。うんうん。はい、ではさっきのことは無かったということで！もう寝ましょ！」
さっきとはまるで別人のように元気さを取り戻し、早口にそう言って俺に背を向けようとするAの腕を咄嗟に掴んで、引き寄せる。バランスを崩して腕の中に飛び込んできたAは、どういう状況か分かっていないようで、ぱちくりと瞬きを一つ。
全くうちの妻は、本当に末恐ろしい。だって、無自覚でこんなにも俺を煽ってしまうんだもの。
彼女の腰に腕を回し、後頭部に指を差し込んで、少し強引に唇を奪う。それになにかを言おうとするAの言葉を全て無視して、俺は何度も何度もキスを繰り返した。
段々と深くなって、生理的な涙を浮かべる彼女の体を、優しくソファーに沈める。別にする気はない。けど、ちょっとくらい付き合ってくれても良いでしょ。
「けんさ、まって」
「待たないよ」
まだ何か言いたげな彼女の唇を再度塞いで、胸板を弱い力で押してくる両手を片手で纏めあげて肘掛けに押し付ける。
そこで逃げられないと悟ったのか、完全に戦意の喪失したAの耳元に、俺はそっと顔を近づけた。
「今出来ないから、キスくらいさせて」
「っ……」
少し膨らんだように思うお腹を優しく撫でながら、体を少し離す。そこでもう一度笑顔で「ね？」と言えば、Aはこくりと一つ頷き、徐に解放された両手を首に巻き付けてきた。
そして俺達はどちらからともなく、お互いの熱を求めるようにして、唾液で潤った唇を重ね合わせた。
．
．
―――誕生日おめでとう、俺。今年のプレゼントは薔薇でも腕時計でもなく、A自身だったね。キスしたいって願望がかなって良かったじゃん。
……でもまぁ次は、この誕生日会にもう一人家族が増えてると良いな。なんてね。
――――――
一日遅れ。無念
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eze(プロフ) - 完結おめでとうございます！夫シリーズ大好きで更新されていることに驚いてやってきましたが、最後の最後まで面白く読ませていただきました。今後も楽しみにしております。 (2020年12月21日 22時) (
レス) id: 823d0abd48 (このIDを非表示/違反報告)
わか(プロフ) - 完結おめでとうございます！白菜さんの作品の中でもこの作品はめちゃくちゃ好みでした！！最後のブーケトスのオチまで完璧でしたね笑 思わず笑ってしまいました笑 これからも応援してます！！ (2020年12月21日 19時) (レス) id: ecdf86f4c4 (このIDを非表示/違反報告)
ピーチフラペチーノ - 終わってしまったぁぁぁぁぁ！！！ぴえん。 (2020年12月21日 15時) (レス) id: cb74bd79ea (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 完結おめでとうございます。とても面白かったです。最後にko-chanが幸せになったのは「よかったなぁko-han！！」と少し興奮しました。私の最押しも出てきてくれましたし……めっちゃ良かったです！ところで、小森ちゃんって他の話に出たことありますか？ (2020年12月21日 5時) (レス) id: 60ae3ef212 (このIDを非表示/違反報告)
ソル(プロフ) - 更新欄にあって発狂しました。大好きです。お話 (2020年12月20日 21時) (レス) id: 744fb08bfc (このIDを非表示/違反報告)
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