。 ページ6
「出たな魔王城」
「魔王城と書いて実家かな」
さてさてやって来てしまった帰省当日。優しい彼は私の荷物まで持ってくれて、目の前に現れた魔王城に勇者さながらの決めポーズを取る私を楽しそうに見つめていた。
母とは結婚式の時に会ったので大して期間は開いていないが、問題は姉達だ。お見合いで呼び出された時も顔を合わせず、招待状を送った結婚式にも一切顔を覗かせなかった二人とは、かなり久々に会う。少しは変わっているだろうか。
拳さんと固く手を握って、いざ出陣。今の私は拳さんという特殊効果のお陰で防御力とメンタル力がいつもの100倍だ。かかってこいよ。
「……俺が先に入ろうか？」
「……お願いします……」
因みにビビり力はいつもの1000倍である。
母親たちが居るであろう襖を前にした途端、ひよって固まった私の代わりに拳さんが襖を開けてくださる。だって、だって、ほんとに姉貴達怖いんだもん。
福良さんの大きな背を壁に、室内に入る。瞬間、18歳の頃に家を出ていった時よりも高くなったような姉の声が鼓膜を揺らし、思わずびくぅっ！！と大袈裟に肩が跳ねてしまった。び、びびらせんじゃねーよ！！
「A久しぶり〜！その人が旦那さん？お見合い婚にしては上手くいってんじゃーん」
あ、駄目だ。やっぱこの姉苦手だ。
「初めましてお姉さん。Aの旦那の、福良拳と言います」
苦手意識が再び芽を出した私とは対照的に、明らかに失礼極まりない姉相手にも丁寧に自己紹介をする拳さんの心は銀河なんでしょうか。銀河なんですね分かります。
そんなギャラクシーハートを持っている拳さんに肩を抱かれ、彼と共に隣り合わせで座布団の上に腰を降ろす。正面には姉二人とお節介な母、そしてあまり口数は多くない父だ。
きちっと正座をして座った私を姉は以前のように「うわ」みたいな目で見ていたが、正直私としては、神と同等の立場である拳さんを前にして正座をしないお前はなんだ？という感情だ。おい、崇めろ。一先ず正座しろ。あ、ごめんなさい嘘です睨まないで。
「ごめんなさいね拳くん、お仕事大変なんでしょう？」
「いえ、丁度一段落ついたところでしたので。こちらこそなかなか顔を出せなくてすみませんでした」
「あら良いのよそんなこと！」
けっ、私には絶対そんなこと言わないくせに。勿論直接言う勇気はない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1239人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
eze(プロフ) - 完結おめでとうございます！夫シリーズ大好きで更新されていることに驚いてやってきましたが、最後の最後まで面白く読ませていただきました。今後も楽しみにしております。 (2020年12月21日 22時) (
レス) id: 823d0abd48 (このIDを非表示/違反報告)
わか(プロフ) - 完結おめでとうございます！白菜さんの作品の中でもこの作品はめちゃくちゃ好みでした！！最後のブーケトスのオチまで完璧でしたね笑 思わず笑ってしまいました笑 これからも応援してます！！ (2020年12月21日 19時) (レス) id: ecdf86f4c4 (このIDを非表示/違反報告)
ピーチフラペチーノ - 終わってしまったぁぁぁぁぁ！！！ぴえん。 (2020年12月21日 15時) (レス) id: cb74bd79ea (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 完結おめでとうございます。とても面白かったです。最後にko-chanが幸せになったのは「よかったなぁko-han！！」と少し興奮しました。私の最押しも出てきてくれましたし……めっちゃ良かったです！ところで、小森ちゃんって他の話に出たことありますか？ (2020年12月21日 5時) (レス) id: 60ae3ef212 (このIDを非表示/違反報告)
ソル(プロフ) - 更新欄にあって発狂しました。大好きです。お話 (2020年12月20日 21時) (レス) id: 744fb08bfc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
