【Q|K】夫に砂糖対応されている件について【fkr】

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いつもは文句しか言わないような奴なのに、なんだかんだ彼は優しい。困っていたらすぐ気づいてなにも言わず隣に居てくれるし、今みたいに聞いていないように見えて、実はちゃんと聞いてくれてるし。
彼のお陰で幾分か眠気が吹っ飛び、最後の力を振り絞って体を起こす。よし、これを乗り切ればあとは帰って寝るだけなのだ。頑張れ私、帰ったら福良さんの寝顔が見れるんだぞ、頑張れ。

ぺしんっと頬を叩いて、椅子を机に近づける。あとは解説を入れるだけだ。そんなに道は遠くない。



「絶対今日中に終わらせてやる」

「……あのさ、A」

「んー？なに」



漸くやる気がみなぎってきた私に、二人きりになってから初めて彼の方から声を掛けてくる。それに視線を上げると、なにやら彼はいつもとは違った神妙な面持ちでこちらをじっと見つめていた。



「……あんまり男の手とか握んない方が良いよ」

「……へ？」



どういう意味だ、と問う前に、彼は自分のPCに視線を戻してしまった。一人置いてけぼりの状況に首を傾げるが、まぁ多分もし見られてたら大変だからって意味だろうと勝手に解釈をして、彼の忠告に素直に「分かった」と頷いておいた。






．







．







「……ただいま我が家ー」



なんとか今日中に仕事を終わらせて、危ないからという航平の厚意に甘えて家の前まで送ってもらい、再び一人になった私。徐に鍵を取り出して玄関を開けると、安心する香りが私を出迎えてくれた。
後ろでオートロックが作動したのを確認し、倒れるようにして廊下に大の字に寝転がる。あー、まだ3月だから冷たいけど、落ち着くのは何故だろうか。

ふうっと息を吐いて、天井を見つめる。なんの代わり映えもない、ただの天井。だけど酷使した頭にはなにも考える要素のない天井は見つめるのに丁度良く、また一つ息を吐き出す。



「―――星宮さんお帰りー」

「ぎゃあああ！！！」



床と一体化し始めた所で予期せぬ声に名前を呼ばれ、思わず可愛げも女らしさの欠片もない悲鳴をあげる。もう少し可愛い悲鳴上げろよとどっかから文句を言われた気がしたが、本当に予期していなかったのだから仕方ないだろう。

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